「宣伝の役に立たない」GOMES、30年ぶり復刊の理由 ちいかわ、アート、ゲームに広がるパルコの現在地

パルコは7月17日、サブカルチャー系フリーペーパー「GOMES by PARCO」の配布を全国15店舗で始めた。1989年から1996年まで発行していた「GOMES」を30年ぶりに復刊したもので、第2号は9月に発行する予定。Webでは同時公開せず、パルコの店頭でのみ配布する。

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(左)30年振りの復刊第1号、(右)旧版1992年9月号

掲げるのは「PARCOの宣伝の役に立たないフリーペーパー」。誌面上でテナントやセールの情報を並べず、直接的な売上獲得も主目的にしていない。狙いについて、パルコ宣伝部部長で復刊版編集長の野口香苗氏は、「こういう面白いことをやっている企業」と知ってもらい、パルコへの愛着につなげることだと説明する。つまり、商品を告知する代わりに、パルコが何を面白がり、どのような表現を受け入れる会社なのかを誌面で示す。GOMESは、同社が掲げる「パルコらしさ」を可視化する媒体だ。

今夏、パルコは約50年続けた全店共通の大型セール「グランバザール」を中止した。川瀬賢二社長は日本経済新聞の取材で、値下げよりも面白い企画が来店の動機になりやすいとの見方を示した。ただし同社は、セールや価格訴求そのものを否定するのではなく、それだけに依存しない来館理由を増やす方針だとしている。GOMESについて川瀬氏は、タイパやコスパなど効率性を重視する風潮が強い時代だからこそ、「ばかばかしいと思われるかもしれない情報」を提供し、日常で息抜きできる媒体や時間が必要だと述べている。

旧版は1号最大10万部、復刊版は「かっこいいことはやらない」

旧GOMESは1989年に創刊し、1996年まで計80号を発行した。1号当たり最大10万部を全国のパルコで配布。タナカカツキと天久聖一の「バカドリル」をはじめ、岡崎京子、しりあがり寿、白根ゆたんぽらの作品や読者投稿を掲載した。GOMESが主催した「GOMES漫画グランプリ」は、辛酸なめ子や『闇金ウシジマくん』の真鍋昌平らが活動を広げる契機の一つとなった。

扱ったのは、パロディやギャグ、B級、ヘタウマなど、当時の主流の商業媒体では扱われにくかった表現だ。パルコは旧版を「パルコの思想と行動を表現するオウンドメディア」と位置づけていた。タナカカツキは、既存の漫画市場では受け入れられにくかった、自分たちが心の底から面白いと思う作品を掲載してくれたと振り返る。

写真 しりあがり寿

しりあがり寿は、旧版に引き続いての登場となった

復刊企画を持ち込んだのは、パルコOBで旧GOMES編集長の堀 真二氏だった。野口氏によると、30年振りという節目もあり、経営層の了承を得て実施が決まった。

パルコは創業以来、劇場やライブハウス、映画、ギャラリーなどを商業施設と並行して運営してきた。創業者の増田通二氏は企業理念を問われると、「自分も周囲も面白がること」と答えていたという。しかし、野口氏は、近年のパルコがクールな表現や「ちいかわ」に代表されるIP企画に力を入れる一方、パロディやばかばかしさといった側面は「一旦置き去りになっている」感覚があったと振り返る。

復刊版の軸は「かっこいいことはやらない」。旧版の関係者だけで過去を再現しないよう、25歳の社員を編集に加え、LEE KAN KYO、落合翔平、金井球ら新しい世代も起用した。

Web公開を見送ったのは、店へ行かなければ入手できない不便さや、紙を所有する感覚を残すためだ。野口氏は、ノベルティのように「もらってうれしい」と感じられる媒体を目指したと話す。復刊版では、旧版を知るファンに加え、ZINE(個人・少人数で自主発行する小冊子)に関心を持つ若年層も読者として想定している。

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