第1回では、企業価値の差を生み出す「非財務価値」について整理した。利益を支える顧客基盤・ブランド・組織力といった見えない価値が、買い手にどう評価されるかによって「のれん勝ち」と「のれん負け」が決まる。しかし、その価値は売り手自身も十分に言語化できていないことが少なくない。買い手はそうした見えない価値をどのように見極め、企業価値へ反映しているのか。第2回では、その評価プロセスを考える。その鍵となるのがビジネスDDである。
■非財務価値はどのように価格へ反映されるのか
中小企業のM&A(以下、スモールM&A)で用いられる代表的な株式価値評価手法は、「時価純資産+営業権法」と「EBITDA倍率法」の2つである。
時価純資産+営業権法は、「株式価値=時価純資産+営業権」で算定される。営業権は一般に「年間の実質営業利益(またはEBITDA)×3~5年分」とされ、ブランド力や技術力、顧客基盤などの非財務価値は、この「年数」の設定に反映される。
EBITDA倍率法は、「株式価値=EBITDA×EBITDA倍率-有利子負債+現預金」で算定される。EBITDA倍率は類似企業や類似取引を基に形成された市場倍率であり、その背景には成長性や収益性、リスクが織り込まれている。そのため、ブランド力、技術力、人材、顧客基盤、シナジーなどの非財務価値も、結果として倍率に反映される。
このように、どちらの手法でも非財務価値は営業権(のれん)の評価を通じて企業価値へ反映されているが、いずれもその金額が見えにくい。
そこで考えられるのがDCF法による定量化である。一般的な実務ではあまり採用されていないが、非財務価値を経済価値として捉えるには有効なアプローチである。具体的には以下のとおりである。
①改善前の事業計画でDCF評価を行う
②非財務資産の強化や経営改善を反映した事業計画でDCF評価を行う
③両者の企業価値の差額を「非財務価値(または非財務施策による価値創造額)」と捉える
②非財務資産の強化や経営改善を反映した事業計画でDCF評価を行う
③両者の企業価値の差額を「非財務価値(または非財務施策による価値創造額)」と捉える