石井氏は冒頭、「エージェントAI」を巡る開発動向から解説を始めた。AIは、人間からのプロンプトに基づいて回答を生成する「生成AI」の段階から、特定のタスクを自律的に実行する「AIエージェント」の段階へと既に移行している。石井氏によれば、今後は営業や経営といった特定の人格を持つ複数のAIエージェントが対話しながら意思決定を行う「マルチエージェント」の世界が直近2~3年で到来し、さらに10年後を目途に人間以上のスピードで自己学習と自己進化を遂げる「ASI(Artificial Super Intelligence/人工超知能)」へと発展していくと予測した。
この潮流の中で注目されるのが「エージェンティックコマース」である。AIが商品のレコメンドや口コミの要約、比較表の作成といった購入前の情報収集をサポートするだけでなく、クーポンの適用や最適な配送オプションの提案といった決済プロセス、さらには購入後のアフターサービスや再購入のリマインドまで、購買サイクル全体に寄り添う世界観だ。
石井氏は「現在は、AIに相談してアドバイスを得る段階だが、将来的には個人の嗜好を学習したAIエージェントが、人間の意思決定を介さずに代理購入を行う自律型の時代が到来する」と語った。
築いてきたブランドイメージがAIで無効に
エージェンティックコマースを巡る市場は、この1年で目まぐるしく変化している。2025年9月にOpenAIがChatGPT内での購入完結を可能にする「Instant Checkout」を発表して以降、Googleも26年1月にUCP(Universal Commerce Protocol/AIエージェントが商品の注文・決済を行える共通規格)を発表し、「Gemini」「AI Search」に購買動線を拡張するなど、AIプラットフォーマーと小売・EC事業者の連携が加速。Walmart、Target、Amazonといった大手企業が次々と参入し、購買体験から決済、標準プロトコルに至るエコシステムが急速に拡大している。
