転載元の記事よりシェアされた「まとめ」の皮肉
先日、気分転換にFacebookのプロフィール写真を変更したら、このコラムのリンクをシェアして紹介したときの何倍も「いいね!」されてしまいました。毎回ギリギリまで時間をかけて書いているコラムより、ものの5分で撮ったような写真のほうが「いいね!」なわけですから、なんとも言えない複雑な気持ちです…。
シェアされることが目的ではないですが、書き手としてはやはりシェアされると嬉しいもの。そこで今回は、シェアされるためには何が必要なのか。ソーシャルメディアとキュレーションメディアとの親和性を通して考えたいと思います。
NAVERまとめへの流入元として、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは大きな割合を占めています。ITに詳しくないような友人から「Twitterとかでよく見るよね」と言われることも、この1年で格段に増えてきました。
結論から言うと、キュレーションメディアはソーシャルメディアと相性がいい。そのことを確信した事例を1つ紹介します。
昨年、あるニュース記事の文章ほとんどがNAVERまとめに転載される事件が起きました。元の記事の要点を、ポイントごとに見出しをつけて抜き出しただけの「悪質なまとめ」です。NAVERまとめは転載を固く禁じており、すぐにそのまとめは削除しましたが、気づいた時にはすでに遅し。ソーシャルメディア上で爆発的に拡散され、元記事のサイトには大変ご迷惑をおかけする結果となってしまいました。
ただ、ここでひとつの疑問が湧きます。このまとめは元記事と比較して、最終的にTwitterで24倍、Facebookで12倍もシェアされました。内容はほぼ同じなのに、なぜ「まとめ」の方が何倍も多くシェアされてしまったのでしょうか。
ソーシャルメディアでは「読了時間」が勝負
ソーシャルメディア上には膨大な情報がものすごい勢いで流れています。1日が24時間しかないのは変わらないのに、処理しなければいけない情報は増え続けている。たくさんの記事を読もうと思えば、当然1つの記事にかけられる時間は短くなっていきます。ソーシャルメディアをよく使う人ほど、「短時間で趣旨を把握したい」という欲求が高くなっていくわけです。
文章を最後まで読み切るにはある程度の時間が必要ですが、「まとめ」はテーマにそった情報を簡潔に示すため、短時間で読めるものが多い。元の文章と比べると深い情報は得られませんが、「要点」だけは理解しやすい。
人にシェアをするということは、誰かに教えたいからこそです。膨大に流れてくる情報の中で「誰かに教えたい」と思ってもらうものにするためには、短時間で理解してもらえなくてはなりません。「要点」を理解できないものは、そもそもシェアのスタートラインにすら立てないですから。
ソーシャルメディアで拡散されるには「短時間で理解できるか」が大変重要な要素です。冒頭でのプロフィール写真の例もそうですが、画像は「ひと目でわかる」からこそ、脊髄反射的にシェアしやすい。ソーシャルでシェアされるということは、いいか悪いかは別にして、パッと見でわかるかどうかに強く影響を受けることは確かです。
じゃあ、簡潔にまとめさえすればシェアされるのか。もちろん、そんなわけはありません。テクニカルな部分で「要点を把握しやすく作る」のは重要ですが、「何をまとめるのか」で評価は大きく変わります。情報として価値が低ければ、拡散力も当然低くなる。そこで次回は、最も拡散に不利とも言える「広告」をテーマに、価値のあるコンテンツづくりとは何かについてお話ししたいと思います。
桜川和樹「100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。」バックナンバー
- 第9回 元記事の24倍もRT…「まとめ」がシェアされやすいワケ(2/8)
- 第8回 編集の民主化の夜明け(後編)(1/25)
- 第7回 編集の民主化の夜明け(前編)(1/11)
- 第6回 R25式モバイルの失敗で学んだ「編集部」の限界(12/14)
- 第5回 複雑化した社会に追いついていないメディアの課題―村社会時代からソーシャル時代までを振り返る(11/30)
- 第4回 「情報の受け手」はテクノロジーに夢を見るか?(11/16)
- 第3回 「アメトーーク」もキュレーション?ネット以外でも加速するメディアのキュレーション化(11/2)
- 第2回 検索ってときどき不便。ランチ難民の僕らの前に現れたヒーローって?(10/19)
- 第1回 情報爆発の時代、キュレーションでメディアは変わるのか?(10/5)