ミュージックに加え、1994年にはフィルム、1998年にはインタラクティブがスタートし、少しずつ日程をずらしながらも同じ時期に3つが開催されています(2013年はインタラクティブが3月8日~12日、フィルム8日~16日、ミュージックが12日~17日)。特にインタラクティブは参加者の数を急速に増やし、いまではミュージックの参加者を超えるほどの参加者を集めています。
この生レポートは、注目のSXSWインタラクティブに、“広告マン”も本当に行く価値があるのか、いや、そうでも無いのか。他の国際広告賞やカンファレンスに比べて、極端に情報の少ないSXSWに乗り込んで、この目で確かめるということで、3回にわたってお送りしています。
前回「絶対に行くべきだ!」とお伝えしておいて、なんなんですが、「行くべきだが、いろいろ心して行け!」とも言っておきたいです。何百というセッションがあるのですが、ちょっと人気のものだと、30分並んでも入れないことがあります。30分間足を棒のようにして立ったままで、あげくの果てに“This session is sold out!”(このセッションは満席で入れません!)と係員に大声で知らされるのは、かなり心くじける体験です。ちょっと話をしたアメリカ人も、You can enjoy this event, if you have patience(忍耐さえあれば、楽しめるイベントだよね)と言っていました。「SXSWには、心して行け!」それが、4日目を迎えた本日3月11日夕方での感想です。
注目のセッション(ここではセミナーではなく、セッションと呼びます)を、幾つかご紹介して行きましょう。
なんと言っても注目されていたのは、イーロン・マスクです。彼は、民間宇宙輸送会社SpaceXの創立者にしてチーフ・デザイナー。また、PayPalの共同創業者としても知られています。このイーロン・マスクに対して、『ロングテール』『フリー』『メイカーズ』の著者クリス・アンダーソンによるインタビュー形式のキーノート・スピーチ。この豪華な顔ぶれは、話の内容もさることながらそこに「居合わせる」ことに意味があり、“生イーロンを見た”ということ自体が貴重な体験となり得るものです。
“生で誰々を見た”ということだけでも価値がありそうなセッションは、他にも幾つも行われています。WEBの発明者ティム・バーナーズ・リー、フェースブックに最初に投資したピーター・ティエル、元アメリカ合衆国副大統領アル・ゴアなどなど。長蛇の列をかいくぐってでも、話を、声を聞く価値のある顔ぶれでしょう。
他にもセッションの内容は、本当に多岐にわたります。今年の注目テクノロジーであった3Dプリンティング関連のセッションから、“スタートアップ(起業)する時に気をつけるべきこと”といった内容まで。さらに、著名なインタラクティブ・エージェンシーR/GAによる“新しいタイプのブレスト法”から、Googleなどによる“アート×コピー×コードで広告を再想像するには?”やBBDOなどによる“広告会社とクライアントは、テクノロジーを使いこなせるか?”といったものまで。
ざっと数えてもセッションの数は、数百は超えています。インタラクティブ、フィルム、ミュージック3部門のオフィシャル・パーティ等まで含めたすべてのイベントは、5,000を超えるそうです。
だからこそ、自分の興味をしっかり持っていかないと、ウロウロしているうちに、人気のセッションには入れずじまい、ということにも、なりかねません。基本的には、ウエブサイト等でよく調べてから「心して」行きましょう。
一方、セッションでも取り上げられていたワードですが、“セレンディピティ(偶然と出会う力)”も大事にするべきかもしれません。目的をガチガチに固めずに、現地に行って気になったキーワードに従って、どんどん調べて見て行く、といった姿勢も大切だと思います。
いずれにしろ、とにかく「心して」出かけましょう。SXSWは一種のモンスターです。一筋縄では、行きません。全容把握も、ほぼ無理。気合を入れて、でも、フレキシブルに!
【広告マンがSXSWに行くべき理由:その2】
学びに。出会いに。インスパイアされに。
佐藤達郎
多摩美術大学教授(広告論 / マーケティング論 / メディア論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数に参加。著書に、『NOをYESにする力!』(実業之日本社)、『アイデアの選び方』(阪急コミュニケーションズ)、『自分を広告する技術』(講談社+α新書)、『教えて!カンヌ国際広告祭』(アスキー新書)がある。
バックナンバー
- SXSWインタラクティブ2013の生レポート(3/3)「売り込みに。チャンスを見つけに。自らを表現しに。」
- SXSWインタラクティブ2013の生レポート(2/3)「学びに。出会いに。インスパイアされに。」(こちらの記事です)
- SXSWインタラクティブ2013の生レポート(1/3)「空気を吸いに。真髄に触れに。」