財務省が3月に発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7775億円の赤字だった。火力発電用の液化天然ガス(LNG)や原油の輸入数量が高止まりしているところに円安が重なり、輸入額を押し上げている。貿易赤字は8カ月連続で、2011年3月から24カ月間の累計赤字額は12兆円に達した。
伸び悩む輸出額のほうをみてみると、2月は前年同月比2.9%減の5兆2841億円。自動車が5.3%減、半導体などの電子部品が9.8%減。これに対して輸入額は11.9%増の6兆615億円。原粗油が12.3%増、LNGが19.1%増と大きく膨らんでいる。
観光産業は貿易収支の悪化を食い止められるのか
貿易収支の赤字を取り戻すために期待が寄せられているのが観光産業の振興だ。観光庁(国土交通省)は、4月3日に、世界最高・最先端の観光産業を目指して、観光産業政策検討会の提言を発表した。
それによると、平成15年に「観光立国を掲げてから10年、従来の観光行政では、プロモーションが中心で、観光産業政策についての議論がなされていなかったという。そのような問題意識に基づき、観光庁では、観光産業の強化に向けた具体策を検討するため、「観光産業政策検討会」を開催し、約半年間の議論を経て、このほど提言をとりまとめた。
そのポイントは次の通り。
- 観光サービスの品質の維持・向上を通じた我が国観光産業のブランド確立
- 先進的な旅行産業への挑戦
- 宿泊産業におけるマネジメント・生産性等の改善・向上
- 旅行の安全の確保
- IT技術の発展に対するニーズの高まり等新しい事象への対応
- 観光産業における優秀な人材の確保・育成
ツアーオペレーター認証制度の導入やITインフラの強化とともにMICEを推進
具体的には、ツアーオペレーター認証制度の導入を図るとともに、平成25年度に、宿泊施設の情報提供制度、旅行産業のあり方・現行諸制度の見直し、旅行業の組織的な安全マネジメントの構築等についての検討を行う。また、実務者層のモチベーションアップのための新たな表彰制度も導入される。
加えて、外国人旅行者の誘致(インバウンド)や国際会議の招致(MICE、Meeting,Incentive tour, Convention,Conference, Exhibitionの頭文字をとった造語。一度に大人数が動くだけでなく、一般の観光旅行に比べ参加者の消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が増えている)への取り組みを強化し、日本の観光産業の国際的なプレゼンスの向上、宿泊業のマネジメント・生産性の向上、IT技術への対応、宿泊施設における無料公衆無線LAN環境の整備等も進めることが盛り込まれている。
外国人とのコミュニケーションに慣れる研修の場を提供するサクラホテル
こうした観光庁の目指す動きを足元から支えていくには、まず観光客を迎える側である日本人が、外国人とのコミュニケーションに慣れる必要がある。そのために、心強い取り組みを始めたのが、都内各所に宿泊施設をもつサクラホテル(取締役:九十九 章之)だ。同ホテルでは、サクラホステル浅草を中心にドミトリールーム(相部屋)を活用した国内企業向けの国際交流を促進している。
サクラホテルは、日本人との交流を希望する外国人バックパッカーや留学生と、国際交流の機会を設けたいと考える国内企業の要望をマッチングし、各ドミトリーに日本人と外国人が混在するようにアレンジする。
すでに利用している企業からは、「宿泊客が国際色豊かで、社員も海外への商品開発やサービスの意識強化につながる」と好評を博しているという。ドミトリータイプなので、宿泊費も1泊2,940円~と格安。経費を抑えながら、外国人旅行者との交流を経験できることから、問い合わせも多くなっているとのこと。
サクラホテルは、浅草(台東区)、池袋(豊島区)、神保町(千代田区)、幡ヶ谷(渋谷区)と、都内のアクセスのよい場所にありながら、手頃な料金設定で外国人旅行者に人気のホテル。同社は、今後も国際交流を中心とした活動に注力することで社会貢献を目指すという。
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