敗者復活を狙うアノニマスの執念、再びFacebookが標的に

活動を加速化するアノニマス

北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、8日、編集局名義の論評で、国際ハッカー集団アノニマスが同サイトをハッキングし、会員情報を公開したことについて「重大な犯罪であり、絶対に容認できない」と非難したが、一方で当該会員情報が事実であり、報道されているとおり、会員に多くの韓国人が登録されていることを裏付けることになった。アノニマスは同時に、北朝鮮の複数のサイトを攻撃し、金正恩氏の画像がブタに差し替えられるなどした。

アノニマスは、インターネットへの検閲、情報の統制、言論や宗教の自由を脅かす組織、団体、政府、国などに対してDDOS攻撃、ハッキング、データの盗取と開示等を行い、攻撃対象をいったん絞り込むとTwitterや公式サイト、YouTubeなどを通じて宣戦布告し、攻撃を繰り返している。

アノニマスの組織の核となる人物は、概ね知られているが、攻撃ごとのプロジェクトコード名が発令されても、誰が首謀者なのか、また参加している組織のメンバーなどについては一切公開されず未だ謎の部分が多い。

9日には、6月25日に北朝鮮の核施設を攻撃する可能性についてTwitterを通じて公表している。北朝鮮政府も思わぬ組織からのサイバー攻撃に実際のところ困惑している様子だ。

最近、なりを潜めていたアノニマスだが、ここにきて活動が活発化、イスラエルの複数の政府機関ウェブサイトが7日、サイバー攻撃を受けてダウンしたが、これについても先週からYouTubeで「アノニマスアラブ」と名乗るグループがイスラエルを攻撃すると予告していた。

また、アノニマスは現在、「Facebook」に対して、インターネットの検閲を行い、言論の自由を抑制し、情報を統制しようとしているとし、サイバー攻撃を加えると宣戦布告している。

アノニマスはかつて2011年夏に「#OpFaceBook」とされる攻撃ミッションを計画したことがある。このときの計画について、このコラムでも2度にわたって紹介した(「ハッカー集団がフェイスブックに宣戦布告!ハッカーVS米国との仮想対戦が現実となる」及び「ハッカー集団アノニマスの正体とフェイスブック攻撃の本気度」。

今回オフィシャルなものとしては2度目となる「Facebook」への攻撃は、アノニマスのオフィシャルホームページで「#OpTruthForce」として紹介されている。

前回、Facebook側の固い牙城に阻まれ、無残な敗北を喫したアノニマスの鼻息は荒く、実質的な敗者復活戦として本気度が感じられる。これまで攻撃対象のウェブサイトの改ざんやDDOS攻撃によるシステムダウンなどを主体としてきたサイバー攻撃は、徐々に情報の統制の背後にある不正行動を立証する証拠の開示などにシフトしつつあり、政府や企業にとってもさらに厄介な存在となりつつある。

今回の対戦では、再びFacebook側が土俵の外にアノニマスをうっちゃるのか、はたまたFacebookの深部にある驚くべき情報が飛びだすのか、見逃せない状況が今現在も密かに続いている。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

もっと読む

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ