マネジメントを巻き込んでその場で合意形成
既に4月も後半に入り、新緑がまぶしい季節になってきましたが、まだまだ気温差が激しい日が続いていますね。GWはお休みの方も多いと思いますので、体調管理をしっかりして、よい休日を迎えられるようにしましょう!僕はというと、基本は暦通りですが、沿岸部の復興状況の視察も兼ねて、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台にもなっている岩手県の北三陸にいく予定です。また次回、その写真などもお見せできればと。
さて、前回まではクライアント側の意識とエージェンシー、プロダクションとしての心構えと考え方、準備などについて中心にお話してきました。今回はワンパクがプロジェクトを進める中で行っている企業側も含めたワークショップ型でのディスカッションについてお話したいと思います。
まずはワンパクがなぜこのプロジェクトのスタイルになったかという話から。
プロジェクトを進める中では様々なリスクが伴いますが、戦略や施策(企画)策定、要件定義などのフェーズで発生するリスクとして「決まらない、決められない」といったことがあります。また、担当者間で”決まった”にもかかわらず、”マネジメントの一声”で決定事項を覆され、結果的に手戻りが発生し、スケジュールに遅延が発生してしまうとういう経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。もちろん企業規模が大きくなればなるほど、組織はヒエラルキーになり、このような状況に陥るリスクは増していきます。
僕も過去にはこのようなプロジェクトを沢山経験しました。そして、それがなぜ発生し続けるかということを考えました。そこで行き着いた結論が”そこに至ったプロセスがマネジメントに見えないこと”と”マネジメントの責任の不在”ということでした。
前回までにお話してきたとおり、従来から通常のエージェンシーやプロダクション、デベロッパーは”企業からの与件”に対して”提案”するスタイルを取ってきました。こういった文化が浸透している社会では、いわばアイデアは提案・提供してもらうものであり、あわよくば無償で手に入るものというという概念が存在しています。それが”代理店”の仕事だろうと。
いわゆるエージェンシーやプロダクションが提案したものに対して、ジャッジするのが企業担当者やマネジメントの仕事であり、そこに対する思い入れや熱意は薄く、プロジェクトを進める当事者意識も持ちにくく、結果的に一度ジャッジしたことでも、覆すこと自体に抵抗感は薄れていきます。
しかしながら何度もこれまで説いてきたように、オウンドメディアを進化させていくには、覚悟と熱意が必要であり、これまで行ってきた”提案・戻し型”のプロジェクトスタイルで進めようとしても、リスクは増すばかりか、プロジェクトとして成立するかも危うい状況に陥ってしまいます。
そこで行きついた結論がこの”ワークショップ型でのディスカッション”によって”決定プロセスを見える化”し、”その場でマネジメントも含めた合意を形成する”というスタイルでした。つまりあらかじめ決まった提案をするのではなく、決めるための題材と場を設定し、ワークショップでのディスカッションを繰り返しながら、戦略や施策、要件などを固めていくという形です。
ワークショップ実施前に必要な7つの約束
ワークショップをすることで見えてくるのは「プロジェクトで大切なことは”合意形成”であり、ドキュメントはそもそも共有のためのツールでしかない」ということです。”ぶっちゃけ”決まったことが明確であれば、手書きでも写真でも良くて、体裁だけの整った綺麗なドキュメントすら必要ないということになります。もちろんプロジェクトを社内で共有するためや納品物として求められればドキュメントも作成しますが。
ワンパクではプロジェクトが始まる前にワークショップで決める内容をプロセス化、ディスカッションの場をファシリテートしながら、企業のプロジェクトマネージャーやメンバーをサポートしていますが、ワークショップ型でのディスカッションによるプロジェクトを進める前に、プロジェクトに携わるメンバーに7つの約束をしてもらいます。
- プロジェクトはメンバー全員のコミットと責任が必要という意識を持つ
- 重要な意志決定のワークショップでは意志決定者の出席必須
- 事前にアジェンダを提出し、何をどのように決めるのかを明確にしておく
- 検討は極力視覚化したものを使いながら進めていく(検討するためのツールやメソッドを準備する)
- ディスカッション中は、メンバーは平等(フラット)。座り方なども工夫する。
- メンバーが発言しやすいようにプロジェクトマネージャーやリーダはファシリテートする。
- ドキュメントを作成するのが目的ではなく、要件の合意を形成するのが目的である
これまでも多くのプロジェクトを行ってきたことを振り返ると、ワークショップでのディスカッションを行いながらプロジェクトを進めることで、手戻りなどによるリスクも起こらなくなり、かつ企業側のプロジェクトに対する当事者意識も格段に向上することは間違いありません。また最終的にできあがったアウトプットに対する愛情や愛着も増すことになり、継続的な運用や改善につながっていきます。この愛情や愛着は手塩にかけて生み出したからこそであり、オウンドメディアには欠かせない要素なんですね。次回からはこの7つの約束を解説していきますのでお楽しみに!
【阿部淳也「HOTに行こうぜ!ワンパクの考えるオウンドメディアの未来」バックナンバー】
- 第6回 当事者意識と主体性を持ったチームが動き出す プロジェクトメイキングの秘訣(4/18)
- 第5回 どれだけ熱く、強く、優秀なチームを作れるか ―― チームビルディングの作法(4/11)
- 第4回 企業サイトのプラットフォーム化 超えるべき5つのハードル(4/4)
- 第3回 オウンドメディアはサービスプラットフォームに進化する(後編)(3/28)
- 第2回 オウンドメディアはサービスプラットフォームに進化する(前編)(3/21)
- 第1回 “Webサイト制作”という言葉じゃもう、語れない!(3/14)