夜の動物園を探検する インタラクティブオーディオガイドツアーに参加してみた

海外在住のクリエイターが現地のクリエイティブをレポートする「ブレーン」の連載「WORLD WATCH」。最新号の同連載のスピンアウトコンテンツとして、誌面に載せきれなかった筆者の体験談の全貌を紹介します。

文:梶原さおり/グラフィックデザイナー

動物園が大人のエンタテインメントになる

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開園18分前。これからどんな未知なる体験が待っているかと思うと興奮せずにはいられない。

皆さんが、最後に動物園を訪れたのはいつ頃だろうか。動物園=子どもだけが楽しむ場所というイメージから、大人になってからは行っていないという方も多いのではないだろうか。私自身もそのひとり。メルボルンに住むようになって早6年。さまざまな場所に積極的に出かけてきたが、オーストラリアで最も歴史のあるメルボルン動物園(1857年設立。世界で3番目に古い)はこれまで訪れたことがなかった。

しかし昨年の11月から始まった「I, ANIMAL」という動物園ツアーの話を聞いて、私はこの動物園のことが気になりだした。どうやらただの動物園ツアーではないらしい。世界初、夜の動物園インタラクティブオーディオガイドツアー、しかも大人限定だという。レヴューを読む限りかなり面白い体験ができると評判だったので、思いきって参加してみることにした。

メルボルン動物園は普段は17時に閉園する。が、「I, ANIMAL」のツアーはそのあとはじまる。参加者は18時半に正面エントランスに集合し、「Zöe(ゾーイ)」がインストールされたiPodtouchとヘッドフォンを渡される。このZöeこそが、参加者一人ひとりのパーソナルガイドの役割を果たす重要なツールとなる。

さて、参加者はおよそ80~100人くらいだろうか。開演10分前、係員から使い方の簡単な説明があり、5分前になったらヘッドフォンを装着する。「I, ANIMAL」の体験が始まるのはこの瞬間からだ。ざわざわしていた参加者はヘッドフォンを付けた瞬間、一気に静まった。Zöeからの指示に集中し、誰も話さなくなるのだ。参加者はキリン、ペンギン、サル、ゾウのツアーから好きなものを一つ選ぶ。Zöeの話を聞いているうちに、カウントダウンも10秒を切りいよいよ開園だ。

Zöeからの指示は、巧みで遊び心がいっぱい

扉が開き、参加者が無言のまま一斉に園内に入って行く。ZöeからはZöe自身の説明や動物園の歴史を説明する音声が流れてくる。選んだツアーによってそれぞれルートが違うので、ある地点にくるとバラバラに歩いていた参加者は、Zöeの指示に従い、誰に相談することもなくそれぞれ群れになりはじめる。あるグループは右側に曲がり、また他のグループは左側にと、迷うことなく静かに歩いて行く。そんな人間の動きも面白い。

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日も落ちかけ、薄暗くなった静かな動物園内。参加者は目の前にいる動物の説明に熱心に耳を傾ける。(photobyJennyBranagan)。

私もZöeの指示通りに歩いて行った。「立ち止まって右を見て下さい」と言われ見るとそこには今にも眠りにつきそうなライオンが2匹。Zöeは、彼らがいつどこから連れてこられたのかなどのバックグラウンドや特徴、さらには世間には公開できないような動物園の裏話(!?)などを教えてくれた。次はバクの柵の前に。Zöeのスクリーン上でこの珍しい形の動物の選択式クイズが出され、遊びながら彼らについて色々知ることができた。スクリーン上のクラフィックはすべて子どもの手描きようなデザインで何とも親しみやすい。
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