“プレス”リリースは過渡期に? “一般生活者”を意識したリリースが増加

増加する“広告風”リリース、行き過ぎた広告表現に注意を

 プレスリリースが誰に向けたものかと聞かれると、名前の通り「プレス(メディア)」に向けた文書であることは従来から広報の基本とされている。しかし最近、このプレスリリースの読み手に新たな広がりが見られる。これまで一般の生活者の目に触れることはほぼなかったリリースだが、近年は自社サイトに掲載したり、配信サービスを利用してポータルサイトに掲載するなどの動きが見られるようになった。それに伴い、一般生活者がリリースを目にする機会が必然的に増えてきている。SNSの普及から、中にはリリースそのものがフェイスブックやツイッターで拡散され、一種のバズが起こる要因となる例も見受けられる。

 そんな現状を踏まえ、最近増えているのが一般生活者に向けたリリース。体裁こそプレスリリースに沿ってはいるが、タイトル付けや内容、表現はメディア以上に一般生活者を意識したものが多く見られる。「最近、(クライアントから)一般生活者に読まれるためのポイントを聞かれることも増えています。配信サービスによっては、提携メディアのサイト上にそのまま自社リリースが掲載されるものもある。その流れから、最近ではリリースそのものを生活者の目に触れる“広告”的な位置付けとして捉える例が見られます」(共同通信PRワイヤー担当者)。従来はリリース上で広告的な表現を使うことは当然ながら“ご法度”で、「メディアに手に取って読んでもらうこと」、そして「露出につなげること」がリリースの目的とされていたが、一般生活者向けリリースという新たなリリースの台頭によってリリースの概念そのものが崩れ始めている。

リリースそのものがバズを引き起こす要因となることも

 そもそもリリースは、報道機関のニュースの“素材”として、「正確な情報」や「実証データに基づく内容」を掲載するという大前提がある。しかし最近見られる一般生活者向けリリースの中には、そのルールを乱す不適切な表現が見られ、誤解を招きかねない表現や客観的な証明のない情報が飛び交っている。「得体の知れないリリースが増えていることから、サービスの質を保つためにもこれまで以上に内容の審査には目を光らせるようにしています。提携メディアへの転載も、相手がメディアである以上“おたくからの配信は信用できない”となればサービスが成り立たない。ステマと同様に、生活者を混乱させるコンテンツは排除される傾向が高まっている中で、今後乱立する配信サービスも淘汰されていくのでは」(共同通信PRワイヤー担当者)。

 一方で、企業が発信するリリースの内容がツイッターやフェイスブックなどのSNSなどで話題になるケースが増えているのも事実だ。一般生活者がリリースに辿り着くのは「検索」からの流入が多いことから、タイトルにあえて検索されやすい旬のワードを盛り込むことも効果的だという。「メディア受けするネタと一般受けするネタは、必ずしも同じものではありません。中には“なぜこのリリースがここまで話題になるのか”と思うものも。一部のコアターゲットの中でリリースの内容が話題となってアクセスが集中したことから、サイトが接続不安定になった例もあります」(PR TIMES担当者)。

 SNSで拡散されやすいリリースをつくるためには何が必要なのだろうか。「まずは旬のワードや今の話題を押さえること。また、ネットユーザーが反応しやすいワードを知っておくことも必要です。定期的にネットニュースなどをウォッチして、今ネットで何が話題なのかを知ることも大切です。ただし、SNSでは、本意ではない情報が独り歩きしてしまうことがあることを忘れてはなりません」(PR TIMES担当者)。リリースの概念そのものが変化しつつある今、“プレス”リリースは過渡期を迎えているのかもしれない。


本記事は、広報会議7月号「確実に取材につなげる プレスリリースの書き方・届き方」特集からの抜粋です。

written by kouhoukaigi

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