参院選2013 ネット選挙の戦い方~「10万人に刺さる“自分コンテンツ”を探しています」伊藤ようすけ編(2)

5月26日、改正公職選挙法が施行され、ネット選挙が解禁となった。これに先立ち、同月24日には自民党公認の参院選候補者が発表された。その中に、「伊藤ようすけ」という名前がある。そう、アドタイの人気連載「伊藤洋介の『こうすればよかったんだぁ』」の執筆者であり、森永製菓で17年間にわたってCM制作に従事、「シャインズ」や「東京プリン」としてアーティスト活動も行っている、あの人だ。

―広報会議編集部では、7月号の特集「ネット選挙のコミュニケーション」に合わせ、参院選に臨む候補者の戦略を紹介していきます。聞き手は、企業を中心にソーシャルメディアマーケティングを手がけるグランドデザイン&カンパニー 代表取締役社長 小川和也氏。

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コンテンツがなければ鬱陶しいだけ


「『お金もらってるんでしょ?』と言われるんですが、本当にもらってない。地盤なし、資金なし、あるのはネット」と笑う伊藤ようすけ氏(右)。左は聞き手の小川和也氏。

小川:候補者の中には、ネットはお金や手間がかかると思っている人が多くないですか?いつも使う広告費に加えてネット広告も出さなければいけないとか、炎上対策のための投資が必要とか。でも、本来のネット選挙の意義はそういうことではないはずです。

もちろんお金をかけられるのであれば、そういった対策にも取り組んだらいいですが、本当は何よりも「政治家そのもの」がウェブ上に良質なコンテンツを準備できるか、ということが問われています。何のコンテンツもなく、ただバナー広告で政党や候補者の名前を連呼されたら、有権者は「ネットの世界から去ってほしい」と思ってしまいますよね。公示期間中の選挙カーを「うるさい」と感じる人は多いと思いますが、その雑音がネットの世界にまで広がったら、候補者はむしろ余計に嫌われてしまう。それではネット選挙解禁の意味がありません。

これからは、ネットで嫌われないコミュニケーション設計がとても重要でしょうね。伊藤さんが、これまでのご経験から自然に「刺さるコンテンツ」を考えているという点は、とても重要だと思います。

伊藤:まさに“鬱陶しくない”ことを重視しています。自分のどの部分をアピールしたら、有権者に受け入れてもらえるのか。政策のことばかりでは聞いてくれない、という助言も受けます。

小川:政策だけだったら、同じ政策であれば誰でもいい、ということになってしまいますよね。

伊藤:そうです。“その政策”を実現してくれそうな政治家としてのキャラクターとはどういうものだろう、と考えています。

小川:そもそも、「政治家」というコンテンツには、政策のほかに何があるんでしょうか。

伊藤:この世界に飛び込んでみて分かったことで当たり前のことではありますが、政治家の皆さんは、ちゃんとやりたいことを持っているわけです。でも、結局「実現できるかどうか」が勝負なんだと思います。国民の皆さんに「実現できそう」という期待を持ってもらえるか。

小川:もう一つ、政党の考え方と個人の考え方のズレのようなものが、SNSの投稿で起こり得ることについてはどのように考えますか? SNSによって、政治家個々人がメディア化することの一側面だと思います。

伊藤:先ほどの「実現できそうか」という意味では、政党は大切だと思っています。自分がやりたいことを実現するためには、ある程度政党の力を借りなければならないからです。これは、政治に限ったことではありません。会社員時代には、やりたいことをやるためにかなり“根回し”しました。政治も同じではないでしょうか。参議院議員の6年という限られた任期の間にやりたいことを実現するためには組織の力が必要だと思います。

小川:一方で、政治家個人の発信力が強まると、政党ではなくて個々の政治家に託せばいい、という考え方が強まる可能性があります。それを前提としたときに、政治家個人としての責任もより大きくなるかもしれません。

政治家個人の発言に共感して、政党を支持することもあるでしょうし、今まで以上に政治家個人がネットで監視されるようになるということですから。発信内容がアーカイブされるのもネットの特徴がゆえに、「言っていることとやっていることが違う」という指摘も受けやすくなってしまいます。「〇〇党の議員である」というだけでは通用しなくなるのではと思います。

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written by kouhoukaigi

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