いきなりですが、クイズです。
【問】ネットで本を売っている「コミコミスタジオ」では、送料に関してある施策をやったことで売上が伸びました。それは次のうちでしょうか?
(1)送料を無料から有料にした
(2)送料を有料から無料にした
(3)送料をメール便価格に下げた
(考えタイム)
ちっ
ちっ
ちっ
ぼーん!
正解は、(1)「送料を無料から有料にした」です!
もはや「送料無料が当たり前」な本のEC業界。多くの事業者は送料をいかに抑えるかに頭を悩ませているのが現状です。広島県でリアル書店を営みつつネットショップを手がける「コミコミスタジオ」もその一社として、送料無料でがんばっていました。
もともと「コミコミスタジオ」は一般的な書店とは違います。「取扱いジャンルを絞る」ことを戦略として、ネットでは「ボーイズラブ専門店」として展開しており、ファンのお客さん(ほとんどが女性)が喜ぶ品揃えとコンテンツを強みとしていました。
しかし、「送料無料」は利益を圧迫するため、ここへきて「送料無料をやめる」という大きな方針転換を決めます。内藤剛社長は、「ダメかもしれない」と売上ダウンを覚悟の上で、送料有料化に踏み切りました。
そのかわりに、「送料分でお客さんにサービスをしよう」と考え、オリジナルのノベルティづくりに注力。関係性の近い作家とコラボして、描き下ろしのペーパーやポストカードを特典としてプレゼントするようにしました。
その結果……売上がダウン。しかし!
「昨年対比で売上ダウンしたのは、たったの1ヵ月だけで済みました」(内藤社長)。
その翌月からは昨対で売上アップし続けています。もちろん利益率も上がりました。現在は、月に30種類ほどのペースでノベルティを制作できるようになってきており、ほかのネット書店との「違い」が拡大しつつあります。
リアルイベントにも注力。勝手に開催するファンが全国に出現
送料有料化と並行して、コミュニティづくりにも力を入れ始めます。
自社サイトでは、月額315円の会員制サービスを開始。3,000円以上送料無料をはじめとした特典があるという内容です。
ソーシャルメディアでは、同店のお客さん像(ペルソナ)を代表するような「自らボーイズラブの大ファン」であるスタッフを担当にしたことで、お店からの一方的な発信ではなく、お店とお客さん、およびお客さん同士のコミュニケーションが促進されつつあります。
リアルのイベント(東京・広島でのオフ会や作家を招いたイベント)にもチャレンジしたところ、予想以上の反響で、全国から参加者が集まったほか、「懇親会が夜中まで続いて、誰も帰ろうとしない」(内藤社長)というほどの盛り上がりを見せたといいます。そのうち、自分の地元で「勝手オフ会」を開催するファンが全国に出現し始めるという展開になっています。
この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。
あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか
本コラムが、大幅加筆修正で書籍化決定!EC業界だけでなく、消耗戦を抜け出すための具体的な方法と、そうしたことを実践している12の事例を紹介します。
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