メディア全体のモニタリング評価
これまでの「カネボウ」の発表内容や新たな発覚事実、周辺情報(消費者庁長官の記者会見コメントなど)を整理すると、リスク対応の節目となったターニングポイントは、以下の4つの報道に分類される。各メディアの反応もこの4つの報道によって大きく山が構成されている。
【2013年7月4日〜5日】
事件の発覚による報道
コーナー趣旨:カネボウ化粧品、美白製品を自主回収、等
番組名:フジテレビ「スーパーニュース」、テレビ朝日「ワイドスクランブル」、等
報道内容:
カネボウ化粧品は美白成分が入った化粧品で肌がまだらに白くなるなどの被害情報があり、8ブランド、54製品を自主回収すると発表。4日夜までに消費者からの電話の問い合わせが約1万5000件あり、現在もつながりにくい状態が続いている。実際には症状の相談は2年前から寄せられていたが、カネボウ化粧品では病気によるものであると判断していた。カネボウ化粧品は対応が遅れたことから夏坂真澄社長を含む50人態勢の対策本部を設置することを決めた。
【2013年7月22日〜26日】
被害拡大に関する最新情報の報道
コーナー趣旨:カネボウ化粧品、美白化粧品の「白斑」被害が拡大、等
番組名:TBS 朝ズバッ、等
報道内容:
カネボウ化粧品は、自社の美白化粧品で肌がまだらに白くなるなどの被害が出ている問題に関して、消費者からの申し出が6808件に上ったと発表した。うち2250人が重症と判定された。カネボウ化粧品は「ブランシールスペリア」など54製品、8割を自主回収する。カネボウ化粧品のロドデノール配合美白化粧品は、海外で累計37万本を販売しており、台湾、香港、韓国、ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンでも自主回収を進めている。台湾の販売代理会社に関しても、28万個が市場に出回ったとして、消費者へ回収を呼びかけている。原因とされているのは、美白有効成分「ロドデノール」とされている。カネボウ化粧品では白斑を訴える相談が2011年から39件あったが、担当者が化粧品による症状ではないと判断し、経営陣に伝わっていなかった。夏坂真澄社長が把握したのは5月頃で、7月4日の会見まで公表されなかった。
【2013年7月29日〜31日】
被害者の声を誤認していたことに関する報道
コーナー趣旨:カネボウ化粧品、美白化粧品の被害が拡大、等
番組名:日本テレビ NEWSZERO、等
報道内容:
カネボウ化粧品の美白化粧品を使い白斑の症状を訴えているのは6808人となり、そのうち2250人は重い症状を訴えている。最初の被害情報は2011年10月に寄せられていたが「原因は病気」と判断し、2013年5月まで化粧品との関連については疑わなかった。回収対象の化粧品は、「ロドデノール」を含み美白効果があるとうたっていたもので、「ロドデノール」は厚生労働省の認可を受けていた。カネボウ化粧品では白斑の症状とロドデノールの関連性を調査している。親会社の花王は、カネボウ化粧品の自主回収の影響で84億円の損失を計上し、通期の売上高は100億円減少とする見通しを明らかにした。
【2013年8月7日】
医師の指摘を受けていたことに関する報道、特集
コーナー趣旨:カネボウ化粧品、美白化粧品の自主回収問題で顧客対応窓口と品質管理部門を花王に統合、等
番組名:NHK総合 ニュース、等
報道内容:
カネボウ化粧品が販売してきた美白効果をうたった化粧品の利用者に、肌がまだらに白くなる症状が出ている問題に関して、カネボウ化粧品は、対応が遅れ被害が拡大したとして12日から顧客対応窓口や品質管理部門を親会社の「花王」に統合すると発表した。利用者からの相談が社内でどのように扱われていたかについて、外部の弁護士が調査を行い、9月初めにも報告書を公表する。カネボウ化粧品は消費者庁に対して、被害を把握したのは5月時点だったと報告していたが、2012年10月頃に医師から化粧品利用者の症状について指摘されていたことが明らかになった。
市場の反応
株価市場の動き(花王)を見てみると、1回目の報道(自主回収発表)に対する反応は比較的低いものであった。しかしながら、2回目の報道で、被害が拡大している事実や生々しい被害者の声、さらに拡大が進む可能性について報道が繰り返し行われると、株価は大きく下落した。その後、損失額の見通しや対応の見込みについて発表したことで株価は下げ止まりし、上昇・回復するかに見えたが、その後の不適切な報道(認知時期の修正)で再び大きく下落する結果となった。回収発表前3945円あった株価は最大約24%下げて3005円まで下落し、一度は3300円台に持ち直したが、再び下落し、16日現在は3100円前後で低迷している。
ネット上の検索件数
検索行動については、1回目は他メディア同様にすぐに沈静化、2回目は1回目と同程度の検索行動で沈静化したかに見えたが、3回目で「被害症例の情報提供を医師から受けながら、調査開始までに2週間をかけた」ことに対してネットユーザーが大きく反応、さらに認知時期が2012年10月に修正されると再び不正確な事実発表に対して検索行動も急増した。
ブログにおける関連キーワード
「カネボウ自主回収」のキーワードと同時に使用された関連キーワードを検証したところ、名詞では「白斑症状」、「美白化粧品」などの事件内容や、「54製品」などの製品数、厚生労働省の認可を受けた「ロドデノール」という具体的な成分名が高頻度で使用されていた。また、「カネボウ化粧品」だけでなく、親会社である「花王」についても認知され、高頻度でブログに浮上していた。動詞では、有効成分を「うたった」、症状を「申し出た」・「訴えた」などのネガティブキーワードが広く使用され、実際に「使っていた」、「治る」かどうか不安、まだらが「目立つ」などの症状について、ユーザーが心配するクチコミが拡散していることがわかった。その他、「まだら」、「白くなる」、症状が「重い」、「安全性」に疑問、など今後の生活への懸念が感じられる言葉も目立った。