このコラムも後半に入りました。ここからは少し、僕の仕事についてお話しさせていただこうと思います。
昨年、全国6都市で37万人を動員した「一番搾りフローズンガーデン」。行かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは一昨年からスタートした「一番搾りフローズン<生>」のブランディングから一番搾りフローズンガーデン開店までのお話を3回に渡ってさせていただこうと思います。
ビール業界は、若者のビール離れに直面しています。「一番搾りフローズン<生>」は、そんな若者に、ビールの美味しさ、楽しさを知ってもらうために投入された期待の新商品です。この商品は小売店で購入することはできません。専用のフローズン生成サーバーがある料飲店でのみ、飲むことができます。故に、小売店で買ってもらうための広告ではなく、料飲店でいかに一番搾りフローズン<生>を飲んでもらうか、体験喚起が必要になります。
そこで、この商品のクリエイティブディレクターとして選ばれたのが、広告のクリエイティブディレクターではなく、リアルな場や体験のクリエイティブディレクターである僕でした。そして、クライアント率いる「一番搾りフローズン<生>」チームがこの商品で目指したこととは、若者世代向けのビール文脈の創造でした。
Y世代とも言われる最近の若者は、企業からのコミュニケーションに対する反応は薄い一方、仲間内で話題になっているモノやコトに対しては積極的な情報収集や体験行動をとります。故に、いかに「若者世代の話題のアイテムになるか」が重要な課題でした。
この「一番搾りフローズン<生>」には3つのUSPがあります。(1)「シャリ泡という従来のビールにはない新しい食感」、(2)「泡にツノが立つ、新しい外観」、「-5°Cの泡のふたで、冷たさ30分キープ」の3つです。
若者のお気に入りになるためには、彼らの仲間内で話題になる必要があり、そのバロメーターは「彼らのタイムラインをどの程度占拠できたか」ということでもあります。そこで、3つのUSPの一つに代表される「泡にツノが立つ、新しい外観」に着目しました。
その理由は、若者が「一番搾りフローズン<生>」を写真に撮ってシェアする行動が容易に想像できますし、ビールの楽しみ方に、「撮る」という新しい価値を付け加えることができると思ったからです。「飲んでも撮っても楽しめる」。これが「一番搾りフローズン<生>」が持った従来のビールには無い価値です。クリエイティブのコアアイデアは「フォトジェニックビールを作る。」です。
「フォトジェニックビール」を作るにあたり、ロゴデザインで重要なことは、「シャリ泡」がビジュアライズされていることです。従来のビールのロゴは、押しの強いデザインイメージですが、この商品で目指したのは、シンプルで可愛らしいイメージです。
例えばこのロゴが入ったグラスが若者の家のキッチンに置かれていても、インテリアに見えるステキロゴ。プロダクトデザインの様なデザインアプローチ。そして、オーバルの中に泡だけちょこんと目立つ、可愛いロゴが生まれました。
USPのひとつ、「シャリ泡」をビジュアライズした「一番搾りフローズン<生>」のロゴ。
さて、商品の打ち出し方は決まりました。では、この商品にどの様な体験を付けて行けば、若者を行動に移させる事ができる強い商品になるでしょうか。次回コラムは、一番搾りフローズンガーデンの、体験開発のお話です。