LTVを高めるCRM戦略~ANAの顧客戦略~
2500万人の「ANAマイレージクラブ」の会員を持つ全日本空輸では現在、LTV(ライフタイムバリュー=生涯顧客価値)を高めるCRM戦略に力を入れている。
今回の講演では、航空券やツアー購入時の支払いに使える「ANA SKYコイン」のほか、入会から現在まで100万マイル以上蓄積した会員向けの「ANA Million Miler プログラム」などを例に、顧客との関係性強化の取り組みを解説した。
「ANA SKYコイン」は2012年10月に「ANAご利用券(eクーポン)」をリニューアルしたもので、「従来からある『マイル』と掛け合わせた、ハイブリッドなプログラム形成を目指している」と稲田部長は説明。
使い切れなかったマイルをコインに交換できるほか、日々の様々なアクションによってコインを貯め、航空券の支払いの一部に充当できる仕組みとなっている。
例えば、同社のサイト「Social Sky Park」上で出題されたテーマに対して自身のツイッターやフェイスブックアカウントで投稿すると、1回あたり25コインが貯まる。投稿してもらうテーマ設定の部分は広告商品となっており、これまで旅行予約サイトや他の航空会社、自治体などが活用してきた。この投稿内容をサービスや商品開発に役立てている企業もあるという。
このほか、タイアップした企業のSNSアカウントをフォローしたり、動画を視聴したりすることでコインを付与するメニューも用意されている。
稲田部長は「搭乗頻度が少ないお客さまとも、日々のコミュニケーションの中で関係性を深めたいとの考えで始めたのが『ANA SKYコイン』」といい、潜在ユーザーとの顧客接点を強化している。
一方、ロイヤル顧客との関係づくりにおいては、クラブ入会から現在までの総飛行距離を示す「ライフタイムマイル」という考え方を導入した。今年からスタートした「ANA Million Miler プログラム」では、クラブ入会から50万マイル以上に到達した会員にオリジナルネームタグを進呈している。ネームタグは、ロイヤル顧客とANAが過ごした” 時の証”のアイテムとして位置づけた。
LTVの向上を目指す施策はまだ始まったばかりという同社だが、すべての基点はグループの経営理念――安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します――にある。
「『顧客』というものの定義が変わっていく中でも経営理念に基づき、お客さまと生涯付き合う覚悟と地道さを大事にしながら、あらゆる施策を進めていければ」。
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