【前回のコラム「渋谷を制覇、次に狙うはタイムズスクエア」はこちら】
「音楽とアート、お酒に国境はない」を実感
その後も彼から連絡が来たけれど、上手にお断りする程の英語力もないので電話はとりあえず全てシカト。そしたら何と、初めて電話番号を渡されたレストランの前で、待ち伏せをしていた彼に呼び止められ、あらびっくり。どうやら窓際の席で男友達2人と飲みながら私が通りかかるのを待っていたらしいのだ。こわ!
観念した私は、女友達も一緒だったことから、そのレストランのバーで一杯だけ付き合う事に。
「なんで電話出ないの?」とかそんな類いの事を聞かれたと思うけれど、ニューヨークに来て1カ月弱の私が唯一言えた言葉は「I don’t like you」。どうやらこれが決定打だったようで、彼は怒って立ち去ってしまった。
バーにとり残された彼の友人二人は「何があったの?!」と不思議そうに私に聞いてきたので、とりあえず一緒に飲む事に。音楽とアートに国境はないと言うけれど、お酒にも国境はない。一緒に飲んで酔っぱらったらもう親友だ。私の地元である四国高知には「返杯」という、危険な風習が今でもある。
自分のグラスで相手に一気飲みさせて、自分も同じ事をされる、という飲み方。永遠に続く一気飲みのループだ。危険極まりないので、高知の居酒屋ですら「返杯禁止!」と壁に貼っているのを見た事がある。そしてこの夜、ニューヨークで初の返杯を初めて会った白人男性二人とした(らしい。←酔って記憶不鮮明)。
そしてそれ以来、二人とは今でも親友で、私のアートディレクター生命に大きく影響を及ぼしたといっても過言ではない出会いになった。
二人のうち一人は広告代理店パブリシス・クアラルンプールのChief Creative Officer、Ken Ratcliffe、そしてもう一人は今をときめくクリエイティブエージェンシー、Droga5(ドロガ・ファイブ)※のChief Creative Officer、Ted Royerだ。
テッドにいたっては、もはや家族のような10年来の親友である。
※ 2006年にデビット・ドロガ氏が仲間5人と設立したエージェンシー。Ad Age誌において2011年Creativity Agency of the Yearを受賞。現在はニューヨークとオーストラリアにオフィスを持つ。