前回のコラム「コトラー・フォーラム2014に参加して(1)」はこちら
前回のコラムはフィリップ・コトラーマーケティング・フォーラム2014のコトラー教授のプレゼン内容を中心としたが、今回はそれ以外の登壇者の話を紹介したい。
今回紹介するのは登壇順にネスレ日本社長の高岡浩三氏、ライズ&ライズ共同経営者ローラ・ライズ氏、グラスゴー大学ビジネススクール教授ルイズ・モウティンホ氏、チュラロンコーン大学サシン経営大学院教授スヴィート・マイアシンシー氏である。
日本で起きたビジネスイノベーション:ネスレアンバサダープログラム
最初に登壇した高岡氏は、高齢化社会におけるネスレの成長戦略を紹介した。日本は少子高齢化で人口は減少に転じているうえ、1人当たりのコーヒー飲用量も年齢を重ねるごとに減少している。その中でネスレ日本は、ビジネスイノベーションを通じて売り上げを伸ばしているというのだ。
高齢化の一方で個人世帯は増えているという事実を踏まえ、個人向けの高品質かつリーズナブルな商品を提供した。具体的には、ネスプレッソコーヒーメーカーを開発し、一杯ごとに新鮮なコーヒーを味わえるカプセルを販売しているのである。日本は高齢先進国であり、世界にも通用するイノベーションが進められているといえるであろう。
しかし、ネスレの強さは個人向けのプログラムに限らない。日本の職場に注目し、オフィス用のコーヒー・コミュニティを立ち上げ販売を伸ばすビジネスモデルを確立したのである。それが「ネスレアンバサダープログラム」である。
このプログラムを説明すると、まずンバサダーに応募し審査を通るとコーヒーメーカーなどのキットが無料で送られてくる。コーヒーを飲み、なくなったらアンバサダーが自分のクレジットカードでカプセルを発注することにより補充してゆくというシステムである。カプセルは一つ20円程度であり、アンバサダーは職場の仲間から代金を回収する。そのほか、アンバサダーの義務は定期的に送られてくるアンケートに答えるくらいで、基本的にはボランティアである。
ネスレは職場でボランティアとして自社製品を販売、料金回収と決済を担当してくれる仲間を作り販売することができる。非常に優れたビジネスモデルイノベーションであり、マーケティング手法である。このようなマーケティングモデルによるビジネスイノベーションは画期的であり、しかも日本発で世界に広がる可能性が高い、優れたモデルケースとなりうると考えている。
ブランディングの重要性、Co-Creation、Glocal
次に登壇したライズ&ライズ共同経営者のローラ・ライズ氏は、ブランディングの重要性を説いた。イノベーションに成功するためには革新的は商品を開発する必要があるが、それをブランディングしなければ成功はなしえないというのである。そしてそれは焦点が絞られたシンプルなネーミングでなければいけないという。具体的な事例を紹介しながら日本企業のブランディングのあり方を問う内容となっていた。
グラスゴー大学教授のルイズ・モウティンホ氏は非常にパッションあふれるスピーチで新しい世の中でテクノロジーを活用し、Co-Creationの重要性を説いていた。チュラロンコーン大学教授のスヴィート・マイアシンシー氏はBusiness Value Creation in the 21st Centuryということで、新しい世界でビジネスに成功するために必要な要素をGlocalのコンセプトを含め多数挙げていた。
そして早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏を加えた熱いパネルディスカッションの後に、9月に東京での世界マーケティングサミットの開催などを案内して閉幕となった。マーケティングとイノベーションを通じて日本のビジネスを活性化するヒントにあふれており、秋のサミットも注目したいと考えている。