「ソーシャルグッドとマーケティングは両立するのか」/アドタイ・デイズレポート(7)

経済のグローバル化や環境変化、震災後の世論などから、広告界でも急速に注目を集めつつある「ソーシャルグッド」。従来、企業成長とは切り離されてきた社会貢献活動は、マーケティングと両立できるものなのか。日本を代表するグローバル企業の一つであるファーストリテイリングと、早くからソーシャルグッドの取り組みを実践する電通の担当者がその今後について話し合った。

【C4】4月15日(火) 14:10~15:10
ソーシャルグッドとマーケティングは両立するのか

<登壇者>

  • 株式会社 電通 ソーシャル・ソリューション局 ソーシャル・クリエーティブ部長 クリエーティブ・ディレクター/アート・ディレクター 福井 崇人 氏
  • 株式会社 ファーストリテイリング CSR部 ソーシャルイノベーションチーム リーダー シェルバ 英子 氏

CSRで企業姿勢を示す

——どのような経緯でCSR活動を始めたのですか。

シェルバ:ファーストリテイリングが、現在のCSR部の前身である社会貢献室を立ち上げたのは2001年。山口の小さな田舎にあった企業が、フリースの大ブームによって、東京へ進出を果たした直後でした。

組織としてはまだぜい弱な中で、単に売上を高めるだけではなく、利益を社会に還元していかなくてはいけないという意識が強まっていったのです。

しかし、明確なビジョンがあったかというと、そうではありませんでした。変化を遂げていったのは、05年に持ち株会社へ移行した時期です。戦略的にCSRを捉えていかなくてはならない、というトップの意思によって強化が図られるようになりました。

それは、世界各国へ出店していく際に、単に安い服を良い品質で売っているというだけでは、受け入れられないからです。

「あなたの会社はこの国に何をしてくれるのか」。そんなプレッシャーを感じる中で、CSRは企業としての姿勢を示す戦略的な役割として位置づけられ、2人でスタートした部署に、今では20人以上のスタッフが在籍しています。

株式会社 電通 福井 崇人 氏

福井:昨年60周年を迎えたカンヌライオンズで受賞した作品のほとんどが、ソーシャルグッドをテーマにしたものでした。

また、東日本大震災以降、企業の方も、何かソーシャルグッドの取り組みをしなくてはいけない、という機運が高まってきたように思います。

広告会社では、ソーシャル局の取り組みは官公庁からの仕事が大半でしたが、民間の方がこういったテーマに真剣になってきた状況において、私たちが官公庁と民間をつないだり、その他様々なステークホルダーのハブになってサポートする時代となってきました。日本が大きく変わろうとしている流れを非常に感じます。

——次世代のCSRを担う人材には、何が求められますか。

シェルバ:以前は、マーケティングや広報といった職種に人気が集まりましたが、最近は社内公募でCSR部を希望する人の数が断トツ人気です。

CSRは経営と非常に強く結びついており、企業の経営理念や方向性をかなり深く考えていなければなりません。限られた経営資源の中でどのような活動を生み出すのが、最大の効果を上げるのかをしっかりと考える必要があります。

また、常にメンバーへ言っているのは、NPOの活動に参加して、ネットワークを築くようにすること。私たちだけではできない活動もたくさんありますから、普段からNPOや国連などと連携を図っておくことが大切です。

福井:クリエーティブ局にいた頃は、どちらかというと自分のアイデアや、自分の世界観を掘り下げていくことが多かったのですが、ソーシャルの世界では、自分から作り出していくことが必要です。

ですから、自分で仕掛けていく積極性や、あるいはアイデアの部分だけではなくて、自分で営業したりプロデュースしたりもできる力も備えていたりと、別の人格が求められます。また、大勢のステークホルダーの皆さんと仕事をしていきますので、ムードメーカーになれると良いですね。

≫次ページ 「アイデアの力で差別化を生む」に続く

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