「情熱がなければ、最後の最後に負けてしまうんです」 ――マイクロアド・渡辺健太郎社長に聞く

時代の流れがますます速くなっている昨今、求められる人材においても、そうした流れに翻弄されることなく、しっかりと考えて行動できる「マーケティング思考」が、マーケティング部門のみならず、あらゆるビジネスパーソンに求められる時代なってきている。
このコラムでは、そうした「マーケティング思考&行動」ができる人材を育成するにはどうすればいいのか?企業のトップに、人材育成について考えていること、大切にしていること、実践していることなどを聞いていく。
今回は、インターネット広告の分野において、DSP、SSPといったアドプラットフォーム事業と国内最大規模のアドネットワーク事業を展開している、マイクロアド 代表取締役の渡辺健太郎氏に伺った。

渡辺健太郎(マイクロアド 代表取締役)

ビジネス以外の教養を養うことがさらなる成長につながる

——渡辺社長が社員に対して“強く求めている力”とは、どのようなものでしょうか?

定義が難しいですが、あえて言うなら「仕事スキル以外の力」です。

弊社は主にインターネット広告や、デジタル技術を用いたアドプラットフォームで事業を展開しています。そうした実務をこなすために必要なスキルというのは、現場で働くうちに自然と身に付いていくものです。

しかし、それ以外の部分、その人のベースとなる、ものの感じ方や経験、広い意味での知性は、仕事だけでは学べないものだと考えています。

食事をするにしても、「いつもファストフードで簡単に済ませる」のと「たまには高級レストランに足を運んでみる」のとでは、見える世界が全く違いますよね。洋服にしてもホテルにしても同じです。

そういった文化の違いを知らないまま、ホテルや外食のマーケティングをしても、知っているものの幅が狭すぎてうまくいかないのではないかと思います。

そもそも、消費というのはそういった文化や地域ごとの差異から生まれるものと考えているので、社員には「さまざまな経験をして教養をつけないと、いつか成長が頭打ちになるよ」という話をけっこうしていますね。

——とはいえ、そういった「教養、知識の幅」は一朝一夕には広げられないものですよね。社員の成長を促すために具体的に行っていることなどはありますか?

「会社が社員に求めている能力」を五段階のピラミッドで説明しています。この図は「5LEVELS (ファイブレベルズ)」という名前で、社員の能力の成長を表しています。

一番下は「従順さ」。“とりあえずちゃんと会社に来る”というようなレベルを指します。

二段目は「勤勉さ」。これは“指示されたことはきちんとやる”というレベル。

そこから「知性」があり、知性があるから「創造力」が発揮でき、そのうえの「情熱」と上がっていきます。この場合、能力が積み上がる形となっているので、例えば三段目の「知性」も、最上段の「情熱」も、その下のことがしっかりできていなければ成り立ちません。

このように順を追って説明することで、教えにくいあいまいな事柄を体系化しようと考えています。

まずはこの「ファイブレベル」をしっかりと社内にアナウンスすることを、今期から始めています。

それができたら、先ほどの「知性=教養を磨くにはどうしたら良いのか?」をより詳しく落とし込んでいく段階に進んでいきます。

こういう概念的な話は、しっかり体系化しないと「本をたくさん読むように!」など、その場限りの“アドバイス”になってしまいます。

そうではなく、例えば「同じ新聞記事の情報でも、その背景に関する知識がある人とない人とでは、そこから読み取れる情報量って全然違うよね」と伝えるとか。そこは注意していますね。

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