インターネット動画共有サービス「ニコニコ動画」が、新規会員の獲得を強化する。ドワンゴが、同事業2011年9月期の販管費を20億5000万円(前期比166.9%)とし、主にプロモーションに充てることが分かった。11日に開かれた2010年度決算発表の席上で、夏野剛取締役が明らかにした。「今期1年間は、これまでにない宣伝広告を実施しようと考えている」(夏野取締役)
「ニコニコ動画」(ポータル事業)の売上高は93.4%増の63億4400万円、営業利益は2300万円の黒字(前期は18億3000万円の損失)で、サービス開始以来始めて通期黒字を達成した。
キャンペーンは11年2月をめどに始める見込み。当期の有料会員の到達目標は139万人で、10歳代と30歳代を中心に「これまでニコニコ動画を訪れていない人の認知度を得たい」(同)とした。12月、東京・原宿にオープンする飲食店併設型のスタジオ「ニコニコ本社」にも会員獲得の目標を課す。夏野取締役は「リアルな場面で、コンテンツへの加入を促すというのは近年のモバイルサービスのひとつのトレンド。店舗では有料会員と無料会員に差を設けて、有料会員を優遇する」などの考えを述べた。
利用者増加を狙う足元では、会員がポイントを購入してサービスを利用する「ニコニコポイント」の収益力強化を進める。「2010年第4・四半期でも売上額は1億4000万円。これを当期では1ケタ、収入を大きくして、収益の柱としたい」(同)と力が入る。
広告収入は堅調も「楽観視はしない」
広告収入は10年第2四半期以降増加を続け、第4四半期では2億5700万円を売り上げた。3カ月ごとに新しい広告商品を投入しているが、総合トップページの売れ行きが好調だという。広告主の業種にも変化が見え始め、ゲームやパソコン・ソフトウエア関連から、食品やファッションに移行し始めた。
「味の素やグリコなどの大手広告主の出稿もあった。ユーザー層の変化はもちろん、大手の広告会社が動き始めたことも要因。ただ、広告収入の好調さがいつまで続くかはわからないので、楽観視はしていない」(夏野取締役)