【前回のコラム】「「業界を引っ張るスターを出したい」——ネットイヤーグループ 代表取締役社長 兼 CEO 石黒不二代氏に聞く」はこちら
このコラムでは、そうした「マーケティング思考&行動」ができる人材を育成するにはどうすればいいのか?企業のトップに、人材育成について考えていること、大切にしていること、実践していることなどを聞いていく。
今回は、企業に対して情報を預けられる環境を提供したり、ビジネスに役立つソリューションを提供したりする「情報資産プラットフォーム事業」を手掛ける、パイプドビッツ 代表取締役社長 CEO 佐谷宣昭氏に聞いた。
求められるのは数字を武器にして自身の意見を述べる力
——貴社が社員に対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
マーケティング思考・行動ができる人材を育てる、ということですが、正直なところ「マーケティング」という言葉があまりに広義で、しっくりきていないところがあります。以前当社でも「マーケティング部」を設けたのですが、仕事の領域が広くて、どこからどこまでやったらよいのか、それぞれの持っている「マーケティング」の仕事のイメージが違っていたため思っていたような成果につながらず、やめてしまったという経緯があります。
また最近は、企業の中で商品づくりから販売までを見る「ブランドマネージャー」という役割の方も増えているようですが、その「見る」というのがはたして、どの程度までのものなのでしょうか。見るからには、実際に商品に反映されなければいけないし、営業活動を行って業績を向上させなくてはいけない。そういう大事な現場の最前線で意見がぶつかり合うところまで見て、行動することこそが大事だと思っています。
そう考えると、考えて・行動できるという能力が両立している人は本当に少ない。だからこそ当社でもそうした人材をより多く育てたいとは思っていますがなかなか難しいですね。
——そういう現場まで見て行動するにはどうすればよいと考えますか?
答えまだありませんが、最近必要だと思っているのが「数字を扱う経験」です。当社でも、さまざまなクライアントのケースを管理することは行っているのですが、上の役職者でも意外と苦手にしている人が多い。
行動にまで落としこめる人、自分で行動できるという人は、実はたくさんいます。しかし、「どういう行動をするべきか」ということを常に疑問を持ちながら、日々のケースに着目して気付き、それについて説得力を持って方向性まで指示できるように統計的な処理をし、数字を示したうえで提案・意見を言えるような人は、当社の社員でもあまりいません。ただ、これからのリーダーにとって統計的なリテラシーはとても重要だと思っています。
——それは、業界にかかわらず求められる力ということでしょうか?
そうですね。それはビッグデータが注目されているから、といったこととは関係なく、自身で拾い集められる日々の数字であっても重要な視点だと思っています。
そもそも仕事をする上ではまず気付きが大切で、それは日々の活動の中で問題認識をどのあたりに持っているかということや、細かな事象に対する観察力がベースにあります。その中で「あ、これは!」という気付きが生まれ、「これって他でも起こっているのではないか?」とか、「この面倒くさい手続きがなくなればすごく効率上がるのに」とか、「お客様のこの疑問は商品の新しいニーズの掘り起こしにつながるのではないか?」とつながっていくわけです。
それから、実際にやる価値があるかを判断するために、数字などの情報を集めて分析し、「これはやるべきだ」と思ったら、それを実行するために統計的な武器を使っていく。そうした流れがあってこそ、数字・統計の力が生きてきます。
しかし、最近は日々の観察眼、気付きがないままに数字だけをこねくり回す人が多いように感じます。それでは単なる数字のゲームになってしまって意味がありません。
だから、何かに気付く・気になったら一度考えてみるという癖をつけられるかどうかがとても大事だと思いますね。