前回のコラム「話題のニュースキュレーションアプリ動向(1)「大手各社、会員拡大へ広告強化」」はこちら
前回のコラムでは、ニュースキュレーションアプリが伸びている状況について紹介した。とはいえ、まだサービスは始まったばかりで収益もこれからの業界がどうして急成長できるのであろうか。
今回のコラムではそのビジネスモデルと成長を支える資金、技術、広告市場と経営について触れていきたい。
各方面から流入する資金:この1年で93億円超と推測
普及途中でビジネスモデルを構築中のサービスが伸びるためには、それなりの投資が必要である。事務所設置や人材の確保はもとより、アプリの開発やニュース配信、広告配信や利益分配のシステムの構築・運用・拡張などに必要な資金は、サービスによる収益で十分に生み出せる状況にはない。そのため、当初は外部から提供されないといけないのである。
現在ニュースキュレーションアプリは有望なサービス分野と見られているので、各業界からの投資が集まっている。各社の資本金(2014年8月14日 現在、資本準備金含む)を見てみると、スマートニュース社の40億円を筆頭として、グノシー社が28.4億、Antennaを運営するグライダーアソシエイツが23.6億と高水準なのがわかるだろう。
資金調達に関するニュースを見ていると、スマートニュース社はグロービス・キャピタル・パートナーズより2013年に4.2億に加え2014年8月8日に英ベンチャーキャピタル(VC)のアトミコとグリーをリード投資家とする36億の資金調達を実施している。グライダーアソシエイツは2013年8月に20億をマクロミル社とシンガポールのベンチャーキャピタルより、グノシー社は2014年3月までに16億円、6月に12億をKDDIやジャフコなどのベンチャーキャピタルやファンドから調達している。合計するとなんとここ1年足らずで、3社だけで93億円以上の資金が集まっていることになる。
スマートニュースリリース
マクロミル・グライダーアソシエイツのリリース
グノシーのリリース
直近の資金調達のタイミングは、各社がテレビCMを打っている時期とマッチしており、かつてグリー、 ディー・エヌ・エー(Mobage)、ミクシィ、サイバーエージェント(ameba)、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどのゲーム会社が伸びてきた時のCM露出を彷彿とさせる。もっとも、CMを積極的に投下していたかつてのゲーム会社はアイテム課金という確固としたビジネスモデルと当初は通信キャリアによる課金という集金メカニズムが存在し、1人の顧客から得られる課金収入も大きかった。現在のニュースキュレーションアプリは複数のサービスが業界のリーダーシップを取る競争を繰り広げる一方で、ジャンル自体を成長させ、ユーザーの獲得の拡大を図っている状況とも言える。
また経営面に関してみると、「共同代表制」が普及していることが特徴的だ。それぞれの専門性を持つメンバーが独自の強みを発揮するにあたっては、それらのバランスを取りながら会社を運営していくことは不可欠であるが、会社の顔であるCEOを共同としているところが上記表の4社中3社を占めるということは、現在のベンチャーの特徴の一つなのかもしれない。いずれにせよ、専門性を持つチームに新規事業の育成のプロフェッショナルであるベンチャーキャピタルが付くことで事業を急速に伸ばす育成モデルが普及しており、日本にこのようなシリコンバレー的な状況が生まれてきたことは歓迎すべきことと考えている。