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シリーズ:企業を変えた「売れ続けるための仕組み」
成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。
【バックナンバー】
・小ロット販売でB2BからB2Cへ顧客が拡大〜タイセイ
・ネットでデザイナーズ家具を販売 絞り込むことが逆に人を集めた「リグナ」
・商品訴求と企業ブランディングで進める大麦市場活性化
レディメードのパッケージ化戦略
人生の中で最も高価な買い物と言えば、住宅ではないだろうか。だからこそ、消費者は限りある予算の中でも、その仕様は複数の選択肢から自分の望むものを選びたいはず…。
そんな思い込みを覆す商品が人気になっている。その商品とは、1棟まるごとパッケージ化することで、屋上付き木造一戸建て住宅を1900万円で販売する(注)「プラスワンリビングハウス」だ。
しかも提案するのは建築資材、緑化資材を提供し、屋上緑化などを手掛ける東邦レオからスピンアウトしinnovation(イノベーション)だ。住宅業界は新規参入、成熟市場に超後発での参入である。
(注)諸経費込み、消費税抜き約32坪の概算価格。エリアによって、施工単価が異なるため価格に変動あり。
もともとは東邦レオの一事業部として始まった事業。2010年に屋上建築資材という同社の資産を活用し、99万円の屋上庭園「プラスワンリビング」を販売したところ、累計で4000世帯以上に購入されるヒットを記録。通常の屋根と同じ価格で、屋上庭園が手に入るというコスト優位戦略が勝因だった。
イノベーションはオーダーメードではなくレディメードにするパッケージ化戦略が奏功をしたことから、屋上だけでなく、住宅にもこの成功体験が拡大できるはず、と2012年から住宅販売への参入を果たしたのだ。
レディメードにすることで部品点数を絞りこみ、資材調達コストを削減。加えて、施工は全国にあるパートナー工務店が行っているが、同じ工事を繰り返して行うため、経験曲線が効き、通常10名程度かかる作業を2名で行えるようになり、人的コストの削減にもつながっているという。
しかも、単に「安い」だけではない。イノベーションが重視するのは「価格と価値の間に、どれだけギャップをつくれるか」だ。
「『プラスワンリビングハウス』が採用している外張り断熱、塗り壁、さらにハイグレードなシステムキッチンといった仕様を他社のオーダーメードの住宅で選んだら3000万円以上の価格になります。メーカーが提示する標準装備の価格が1500万円程度だったとしても、ご自身がいいなと思うオプションを選んでいくと、結果的に当初の金額では理想の住宅が手に入らないことが分かると思います」(イノベーション広報担当 熊原淳氏)と話す。
ビジネスは結論から考える
長年B2Bでビジネスを行ってきた、東邦レオからいかにして、B2C事業のイノベーション、さらに「プラスワンリビングハウス」が生まれたのだろうか。そこには、結論から考えるビジネスモデルという発想がある。
「プラスワンリビングハウス」の構想では、まずターゲットとなる30代世代の平均年収から平均的な土地代を差し引き、目指す売価を決めてしまった。その上でいかにして、その価格を実現するかを考えていったのだ。
売れるかどうか不安になると、保険のために商品を複数作ってしまうのが企業の性。しかしイノベーションでは、「プラスワンリビングハウス」1点に絞り込み、社内の資源を集中投下させる決断ができているのだ。
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