CMはテレビの「番組」
対談:佐々木宏×佐藤可士和
サントリーやソフトバンクなど、20年以上にもわたり、その年の顔となる広告を作り続けてきた佐々木宏さんと、ユニクロやダイワのクリエイティブディレクターとして、商品戦略からマーケティング、コミュニケーションすべてを手がける佐藤可士和さん。日本企業のコミュニケーションの本流を担う2人が語る、影響力の強いクリエイションをし続ける方法とは。
佐藤可士和 佐々木さんは、僕が社会人1年目のときに、JR東日本の小泉今日子の広告やフジテレビの「ルール」の仕事で既に活躍されていて。僕にとっては20年以上の間”ずーっと活躍している人”なんです。しかもその間、ある意味テレビCMにこだわりつづけている。そこがすごいと思う。
佐々木宏 CMというより、テレビなんだよね。本当はテレビ局のディレクターになりたかったんだけど、不況でテレビ局の募集がなかったから、電通の「テレビ局」に行こうと思ったんです。でも入ったら新聞雑誌局に配属されてガクッ。気を取り直して、6年後にクリエイティブに転局して、28歳のときコピーライターになったんです。
佐藤 なるほど、原点はテレビだったんですね。
佐々木 そう。とにかく大のテレビ好き。バラエティ系好き。紅白歌合戦とか1回でいいからやってみたい(笑)。ドキュメントものもやりたかったし、ニュースショーなんかも。だから、クリエイティブディレクターになって、テレビCMの仕事をするようになって最初は15秒や30秒のCMは短いよ、寂しいよと思っていたんです。2~3時間のスペシャル番組がやりたいぞと。でも仕事を続ける中で、テレビCMはいろいろな局で何回も流れるとか、制作費の規模だとか、テレビ番組とはまた違ったパワーと魅力もあると発見して。要するに、サントリーのテレビとか、ソフトバンクのテレビをつくっているんだと。いろいろな会社や商品の宣伝という形でテレビに参加するのは、バラエティに富んでいてこりゃ面白いやと。それであるとき、「実は結構、広告は俺の天職か…」と気づいた。それからはひたすら広告にはまって、30年。今でもひたすら楽しい(笑)。
佐藤 今のお話で、佐々木さんのこれまでやってきたことが全部腑に落ちました。宇宙人ジョーンズや白戸家は、放送時間の決まっていないドラマを、サントリーやソフトバンクが提供しているという感じですね。(…本誌P.40に続く)
『ブレーン』2011年7月号の特集は…
日本を元気にするには、いまこそクリエイティブの力が必要だ――資源に乏しい国と言われる日本ですが、私たちにはアイデアを生みだすクリエイティビティがあります。
企業の課題解決のために磨かれてきた広告クリエイターのスキルは、ここ数年で教育や環境問題、地域振興などに広く生かされるようになりました。社会の価値観が激変している今こそ、コミュニケーションによって新たな価値を生みだし、人の心を明るくし、世の中のコミュニケーションを活性化するクリエイターの役割は最大限に高まっています。
クリエイティブは、日本の資源。クリエイターが活躍すればするほど、日本はきっと強くて明るい国になる。この特集では、そんな「クリエイティブ立国ニッポン」のつくり方を、広告やエンターテインメントの第一線で活躍する方々の声を通じて探ります。
月刊ブレーン2011年7号
特集1 : 『クリエイティブ立国、ニッポンをつくろう!』 より一部抜粋