エロ本の隠し場所、と、失われゆく表現の間

【前回のコラム】「まったく甲斐性のない男が会社を立て直そうとした話」こちら

男子の童貞喪失年数がやばい。


実に、20代の40.6%が童貞である
というビッグデータがある。

で、私、思うんですこれ。

若者のクリエーティビティを阻害している原因なんじゃないかと。

昔は、逆であった。

童貞期間が長いほど、クリエイティブ戦闘力が高い
というのが定説だ。

童貞の期間が長ければ長いほど、妄想力を溜め続けられた、カルマの高い存在として崇められたわけですよ。

ぼくらの世代では、「ヤラハタ」(※童貞で20歳を迎えること)は、憐憫の対象というより「よくやった」「貴重なことだ」「ワンガリ・マータイさんの『もったいない』精神でもう少し続けたらどうだ」などと、うらやみの目で見られることが多い。
なぜか?

みうらじゅん・伊集院光の提唱する「童貞力」、童貞だけが持ちうる想像力の存在に、ほとんどの男性は「あのころは俺もバカだった」と遠い目をして深く共感するからだ。

だいたい、14歳〜18歳くらいの若者なんて、脳内の98%はエロいことを考えている。

残りの1%が部活で、あとの1%で勉強とか何とか日常生活を切り抜けるものなのだ。

この98%は、たいてい衝動的なアクションにつながり、

エロにまつわるエトセトラ、武勇伝が誕生する。

たとえば、弊社の林という男は、実家が3人兄弟で、非常に狭い住居に暮らしていた。
兄弟と共に暮らしているせいで、一人でエロに耽溺するタイミングが存在しない。
そこで林は「カレンダーを天井に貼る」という着想を得た。
エロ本の中から一ページを選りすぐり、カレンダーと天井の間に挟んで隠していた。

なるほど、天井に貼れば、間に挟んだ紙片が落ちてくることはない……

デスノートかお前は。

デスノート的仕込み紙片

かくいうぼくも、例外ではない。

栃木のような片田舎では、エロビデオを借りるなどという行為はご法度だ。
中高生は全員、なぜか往年の広末涼子のごとく頬が紅潮しているため、

「18歳未満は禁止です」と店員に速攻バレて大恥をかく。
そして、なぜかそういう失態がクラスじゅうにバレるのだ。ムラ社会の恐ろしさよ。

ぼくの世代には「ギルガメッシュないと」という伝説的なTV番組があった。地上波にもかかわらず、恐ろしくエロいコーナーがあったり、一時間番組のちょうど30分あたりに新作アダルトビデオがほんの一瞬だけ流れる。

田舎の中学生にとっては、紅白よりギルガメのほうが視聴率が高い。

次ページ「ぼくは、「ギルガメ」を録画して」

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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