コア・コンピタンスの再定義――目のつけどころを変えると 新たなチャンスが生まれる

株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第2号(2015年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

Redefine Your Core Competence!

長年、社会に存在し続けてきた業界が消えてなくなる―そんな現象が決して珍しくない昨今。時代が変わっても消費者からの支持を得て、生き残っていくために、自社の資産を生かしながら、ちょっとした視点の転換を行うことで事業変革を図る企業が増えている。

顧客と競争相手の変化が事業変革を余儀なくさせる

企業は今、時代に合わせた事業変革を迫られている―その理由を、早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授は「3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)のうち、顧客と競合が変化しているのだから、自社も変わらなければいけないのは当然の帰結」と説明する。

デジタルテクノロジーの進歩が消費者のニーズを劇的に変え、グローバリゼーションとそれに伴う規制緩和が、新たな競争相手を生んでいる。販売チャネルやコスト構造、業態や持っている技術が異なる企業とも競合し、業界の垣根を超えて顧客を奪い合う「異業種競争」が、市場の成熟に伴って増え続けているのだ。

長らく環境の変化が起こっていなかった業界にも、「遅かれ早かれ、消費者の価値観を変えるようなイノベーションが起こり、業界内各社が変革をせざるを得ない時が訪れると思います」と内田氏は予測する。

内田和成(早稲田大学大学院商学研究科早稲田大学ビジネススクール 教授) 東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループに入社し、同社日本代表やシニア・アドバイザーを歴任。2006年4月より現職(早稲田大学ビジネススクール教授は2007年4月~)。近著に『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(日本経済出版社)。

内田和成(早稲田大学大学院商学研究科早稲田大学ビジネススクール 教授)
東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループに入社し、同社日本代表やシニア・アドバイザーを歴任。2006年4月より現職(早稲田大学ビジネススクール教授は2007年4月~)。近著に『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(日本経済出版社)。

しかしイノベーションは消費者の志向を変え、市場環境が大きく転換する“最大のきっかけ”ではあるが、イノベーションがもたらされれば、必ず変化が起きるとは限らない。内田氏は「企業にとって大事なことは、自社が関連する業界が、そのイノベーションによって動くのか、動かないのかを見極めることです」と話す。

また、イノベーションは必ずしも自ら仕掛ける必要はなく、他社が起こしたイノベーションに“乗っかる”のも一つの手だと言う。「市場で起こったイノベーションを見て、それが自社のドメインやコア・コンピタンスと合致するようなものであれば、便乗する。強力なブランド力や販売チャネルを持つ企業には、有効な方法だと思います」。

ただ、こうした方法はブランド力のある企業や先行投資をする資金力のある企業でなければ、ハードルが高いのも事実。

そのような体力を持たない企業はどうすればいいのか。内田氏は2つの方法を説明する。

「まず、ベンチャー企業のように、自社の本業に成長や変革の余地を残している場合は、世の中の価値観を一気に変えるような大胆な動きをしやすい。つまり“持たざる企業の強み”を生かすことができるのです」。

例えばゲーム業界におけるDeNAやグリーは、ハードにこだわることなく、ソフト、具体的にはスマートフォン向けゲームの開発に注力し、ソニーや任天堂といった大手が踏み込めなかった領域で急成長を遂げた。

「一方で、すでに展開している事業が、他業種からの参入企業や業界自体の衰退に脅かされている場合は、市場から“半歩”ずらした視点で新しい製品・サービスを生み出すことで、自分たちの土俵につくり変えることができます。例えば、兵庫県に本社を構える畳店・TTNコーポレーションは、飲食店や旅館の畳交換で需要を伸ばし、縮小する業界にあって売上を伸ばし続け、まさに“一人勝ち”状態です」。

これまでは畳替えというと日中に行われるのが業界の常識で、飲食店はそのために貴重な営業時間を削らざるを得なかった。しかし同社は、そんな常識を覆した。24時間営業の畳工場を稼働させることで、飲食店の閉店時間中に畳を張り替えるという新しいサービスを提供したのだ。

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