第一陣はライオン、キユーピーら8商品 都内主婦40代の反応は
食品が持つ健康への効果を示せる「機能性表示食品制度」が始まった。17日、届け出第一陣となる企業が発表され、ライオンやキリンビバレッジ、キリンビール、キユーピー、アサヒフードアンドヘルスケア、ファンケルなど7社8製品が利用することがわかった。うち6製品は、サプリメント形状の加工食品だ。
キリングループの2社は既存ブランドで飲料を投下する。いずれも基幹商品より数円程度高い。キリンビバレッジは「食事の生茶」を6月23日に154円(希望小売価格、税込)で発売する。「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」「おなかの調子をすっきり整える」という3つの機能を持たせた。パッケージ前面には「機能性表示食品」と記す。キリンビールは、ノンアルコールビール「パーフェクトフリー」を6月16日に発売する。市場実勢価格は350ミリリットルで147円前後。こちらも「食事の生茶」同様の表記をする。
「機能性表示食品制度」は4月1日から始まった新制度だ。消費者の健康志向の高まりをい風に、食品プロモーションでも、トクホ(特定保健用食品)や栄養機能食品に次ぐ“第三の波”として注目を集める。パッケージに表示できる成分のポイントは、「体に有効な(機能)成分を特定できている」「なぜ有効なのか(作用機序)が判明している」「効果的な量が分かっている」の3点となる(図1)。
メーカーにとって最大のメリットは、届け出に要する時間や費用がトクホに比べて低い点だ。一般的にトクホを取得するには費用にして2~4億円、期間も1~2年かかるとされる(図2)。その多くは臨床試験の実施にかかるが、新たな機能性表示では、複数の査読済み論文などを用いた「システマティック・レビュー」による実証でも届け出ができる。これなら「1成分あたり数百万円ほど」(消費者庁食品表示企画課・塩澤信良氏)となり、中小企業にも門戸が開かれる。
データやスペックの“機能性”を「あー、わかる!」の感性フレーズに翻訳
「機能をただ打ち出すだけでは、『これはすごい、欲しい』と言ってもらうのは難しいだろう」と、カゴメ「高性能爆薬でつくる野菜ジュース」の企画、野菜一日これ一本「野菜は皿か!」を手がけたコピーライターの斉藤賢司氏は指摘する。往々にして、各社製品の機能性は似通ってしまうからだ。商品パッケージのキャッチフレーズや、ネーミングにも工夫が必要となる。
「ポイントは、理性的な『データやスペックの言葉』を、感性的な『身体の言葉』にすること(図3)。あくまで仮定の話だが、『お腹』を機能性の軸に置くなら、『ベルトの上のタプタプ』や『ハミ肉』という表現のほうが消費者に届きやすいかもしれない。『骨が丈夫になる』より『骨がミチミチになる』だったり、『お肌すべすべ肉だんご』より『また会いたいと思わせる肌になるミートボール』だったり。商品の強みを買い手の関心事に翻訳することが、ますます重要になるはず」(同、関連記事はこちら)。
2014年は健康食品・サプリメント市場だけでも1兆5341億円規模(インテージ調べ)。消費者の健康志向は高まる一方だ。月刊『販促会議』編集部とクロス・マーケティングで東京都内在住の40歳代主婦を対象に実施した調査では、「高くても『機能性表示食品』を買いますか?」との問いに、62%が「機能性表示がない食品より高くても、1回は試す」と回答しており、期待が伺える。
一方で、制度自体の知名度の低さも顕著だった。「表示の効果が本当に得られるのか疑問がある」といった声も見られた。メーカー各社が機能性商品の売り伸ばしを図るには、消費者が当事者意識を持てる“機能性表示”で試し買いを促し、効果の実感で信頼を得ることが要となりそうだ。