ここでは、『販促会議』2015年4月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
普段、病院に通っていない人間が、たまに病院に行って処方箋をもらってくると、「果たして、どの薬局で薬を買えば良いのだろうか」と結構、困ることがある。
実は先日、大学病院で親知らずを2本まとめて抜く治療をしてきたのだが、その時も、痛み止めなどが処方されたものの「どこの薬局に行こうか」と迷ったのだった。
大学病院の前には何軒も薬局があるが、いずれも混んでいて時間がかかる。一方で、近所にあるガラガラの薬局が気になるが、ちょっと不安に感じたりもする。処方箋なのだから、どこの薬局でも違いはないのだろうが、やはり、待ち時間はできるだけ短く、安心できるところで処方してもらいものだ。
そんなことを漠然と考えていたら、ドラッグチェーン大手の「マツモトキヨシ」がアプリで処方箋を予め写真に撮って送信しておけば、対応するマツモトキヨシの店舗で、すぐに薬が受け取れるというサービスを始めていた。
ユーザーは処方箋を写真で撮り、受け取り希望日時・最寄りの店舗名を選択して情報を送信する。送られてきたデータは指定店舗の薬剤師が受け取り、薬の準備ができたら、メールが返ってくる。
ユーザーは指定した時間に来店するだけで、できる限り短い待ち時間で薬を受け取れるというのだ。
マツモトキヨシのアプリでは、これまでもユーザーにお得情報を配信するなどの機能があったが、今回、マツモトキヨシではアプリをバージョンアップすることで、処方箋送信機能に対応したのだった。
お得情報に響く顧客層は一定数いるのは間違いないが、全く響かない層もいるのも事実だ。
その点、「処方箋を事前に送って、受け取りがスピーディになる」という取り組みは、「お得」だけでは関心のなかった新たな層も掘り起こし、アプリのダウンロードや会員登録につながる気がしてならない。
アプリで「薬の処方を早く対応する」というのはまさにドラッグストアであるマツモトキヨシだからこそできる「本職を生かしたサービス」といえるだろう。
他の業種でも、「本業を生かせるサービスはなにか」というのを改めて考えても良いのではないだろうか。
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石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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