<パネラー>
- ジェイアイエヌ 商品ユニット ユニット長 マーケティング室 マネージャー 矢村 功 氏
- カゴメ コーポレートコミュニケーション本部 メディアコミュニケーション部 広告グループ課長 西村 晋介 氏
<モデレーター>
- 『宣伝会議』編集長 谷口 優
生活者とどうつながり、正しい情報を伝えるのか
——広告や広報、デジタルやリアルといった垣根を越えて、コミュニケーション全般を考えていかなければいけない時代になっています。生活者を取り巻く情報環境が大きく変化している中で、マーケティング上の課題や、広告やコミュニケーションを取り巻く環境で気になっていることは何でしょう。
矢村:2011年にパソコン用のメガネ「JINS PC」をローンチしたときから感じていることですが、どこまでが製品で、どこまでが広告、あるいはコンテンツなのかという垣根がどんどんなくなってきています。一方で、複雑なコンテキストや情報を伝えることができる手段は急速に発達してきており、そうしたテクノロジーは使わない手はないと考えています。また、生活者があらゆる接点で情報に触れる機会が増えており、テレビCMを打てば認知をとることはできますが、そこから興味を持ってもらったり、実際に手に取ってもらったりすることは逆にハードルが上がっているようにも感じます。
この4月には新たなブランドビジョンである「Magnify Life(マグニファイ ライフ)」(人々の人生を拡大し豊かにする)を体現した新生JINSが始動し、いかにJINSというブランドを好きになってもらうかという観点から、さまざまな取り組みを行っています。ブランドビジョンに沿った商品や店頭を展開していくために、コミュニケーションのプランニングを1年以上かけて取り組みました。
西村:私どもは、野菜ジュースを事業の柱にしています。10〜15年前の健康を標榜する商品がそう多くない時代に「体内環境正常化」というメッセージで野菜飲料の健康価値向上を図ろうと、取り組んでまいりました。近年は特定保健用商品(特保)を中心にさまざまな商品が登場し、生活者の間で従来の健康カテゴリー商品との垣根がなくなり、野菜飲料やお茶、ソフトドリンクなどが競合関係になってきています。その中でどうしたら選ばれるかということに課題を感じています。
こうした環境においても変わらないのは、野菜飲料の健康価値をいかに理解し、買って、飲んでもらうかということになります。近年のネット上では健康に関する情報が溢れていますが、「○○は危ない」「砂糖がこんなに入っている」など、事実と異なる情報も含め、どちらかというとネガティブな情報がよりシェアされやすい傾向にあります。野菜飲料に含まれる糖分も、基本的には野菜・果実由来なのですが、あたかも砂糖そのものが入っているかのような扱われ方をすると、誤解を招く情報が拡散してしまうというリスクがあります。そういう意味でも、野菜飲料の健康情報や商品の内容品質に関する事実をわかりやすく編集し、それを伝えたい人にどうやって正しく発信していくか、ということはネット上でのコミュニケーションを考えていく上で非常に重要な課題になっています。
もう一つは、動画です。スマートフォンでの動画視聴も当たり前になり、動画の視聴環境は増えています。また、情報が溢れるなかで、文字情報、テキスト情報を「読む」ことよりも動画によって可視化された情報を「見る」方が、情報量はもちろん、感性に与える影響や理解の深さも変わってきます。そういう意味でも動画は今後のキーになっていくと感じています。