博報堂は11日、2014年10月からβ版として活動してきた次世代型クリエイティブプロジェクト「恋する芸術と科学」ラボを本格的に始動した。
「文理芸と産官学の垣根を超えた専門性の融合によって、未来を創造する」をコンセプトとする同ラボでは、クリエイティブディレクター、デザイナー、プログラマー、データサイエンティスト、建築家、エンジニア、生物学者、音楽家といった各専門分野のリーダーを集め、一般的に対立しがちな視点ーー感性と理性、伝統と未来、日本らしさとグローバリゼージョン、デザインとテクノロジー、企業営利とサステナビリティなどーーを高次元で融合しながら、企業と社会の課題を解決していく。
具体的には、長期視点で社会トレンドを捉えたうえで、企業の成長のためのシナリオサポート、クリエイティブコンサルティングサービスなどを提供する。大学機関との共同研究、政府機関・地方自治体への成長戦略立案、産業コラボレーションによる事業化など、産官学融合も推進する。さらに、投資機関との提携による従来にない「投資×経営×クリエイティブ」のビジネススキームを確立するとしている。
これまでの実績には、2014年に文部科学省と協働でスタートした海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム~」や、川を社会全体のイシューとして捉え、各国の大学やデザインファームと連携して課題解決に取り組むオープンプラットフォーム「World River Story」などが挙げられる。他にもいくつかの産学協働案件・クライアント案件が進行しており、今後も毎年、多様なプレイヤーとともに複数のソーシャルイシュープロジェクトを手掛けていく予定としている。
ラボのリーダーを務めるのは、同社クリエイティブディレクターの市耒健太郎氏。同氏は企業の経営課題に基づく戦略立案から、クリエイティブおよびメディア開発、商品開発までを統合的に担当し、国内外の幅広い業種業態の企業・団体のブランディングを手掛けてきた。2012年~2014年には、雑誌『広告』の編集長を兼任。今回のプロジェクト名でもある「恋する芸術と科学」をテーマに掲げ、広告業界のみならず、アート、映画、建築、文学、教育、科学といったフィールドを巻き込んだ「新しい時代の創造性」について特集してきた。
設立時メンバーは市耒氏を含め7人。博報堂DYメディアパートナーズ デジタル・クリエイティブ・プランナーの大里学氏、フリーランスプログラマーの大島遼氏、博報堂 マネージメント・ディレクターの加藤勤之氏、フリーランスデザイナーの小原亘氏、アクティビストの清田直博氏、博報堂 コピーライター/フードライターの平野紗季子氏(氏名 五十音順)が名を連ね、この他にも社内外のメンバーが数名加わる。市耒氏と大里氏は専任で、そのほかのメンバーは現職との兼務体制となる。
また、ラボの考え方や、実際の活動内容を広く発信することを目的に、今夏、既存の『広告』とは別に、新たな雑誌『恋する芸術と科学』を博報堂から創刊する。編集長を市耒氏、副編集長を大里氏が務めるもので、かつて『広告』を編集していた2人が再びタッグを組む。販売チャネルや刊行サイクル、マネタイズの方法、Web版の有無など、詳細は未定としている。第1号の特集テーマは「jozo 2050」。人類が6000年以上変わらず続けてきた「醸造・発酵」を取り上げ、醸造・発酵に支えられてきた食の未来を描く予定で、現在企画・取材を進めている。
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