ここでは、『販促会議』2015年6月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
企業が販促活動の一環として、スマホアプリを開発し、配布しても、ユーザーがなかなかインストールをしてくれない、仮にアプリをダウンロードしてくれても、その後、継続的に使い続けてくれるかと言えば、それもかなり難しかったりする。
特にユーザーは、使うアプリが限られ、企業が配布したアプリを毎日のように使ってもらうというのは困難だ。
そんななか、そういった解決方法として期待されているのが、ここ最近、普及が進みつつある技術である「iBeacon」だ。狭い範囲にスマホへ向けて電波を飛ばすことで、スマホに通知を送ることができる。アプリが入ってさえいれば、様々なメッセージを届けることが可能だ。そこからアプリを起動してもらえば、さらに深い情報を伝えられる。
最近、オフィスで本格カフェマシンを使える「ネスカフェ アンバサダー」という仕組みがCMなどでも紹介されているが、この春から、カフェマシンにiBeaconの発信器を取り付け、位置連動型コンテンツ配信機能を備えるようになったという。
ユーザーがカフェマシンに近づき、コーヒーを淹れると、ポイント情報や、占い、天気といったコンテンツをスマホのアプリに配信するという。
このサービスの興味深い点は「ユーザーがコーヒーを淹れるとコンテンツを配信する」という点だ。単に、ユーザーのスマホがカフェマシンに設置されたiBeaconの発信器に近づき、電波を受信しただけでは「コーヒーを淹れたのか」は判断できない。ただ、カフェマシンの前を通り過ぎただけで、コンテンツを配信してしまっては、ユーザーには「邪魔な情報」と認識されてしまう。
このサービスでは、ユーザーがiBeaconの発信器に近づき、電波を受信したところでアプリが動き出し「コーヒーを淹れる音」を感知したところで情報が配信されるのだという。
スマホにはマイクという「耳」が存在する。iBeaconとマイクを組み合わせることで「近くにいてコーヒーを淹れている」という判断ができるというわけだ。
当然、コーヒーを飲もうとしているのだから、ちょっとした息抜きをしたいわけで、時間にも余裕がある。スマホに情報が配信されていたら、ついつい見てしまうだろう。
単にiBeaconを活用するだけでなく「音を組み合わせる」というのは、いろんな企業や場面で応用が利くような気がしてならない。
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石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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