震災後のAC差し替え、広告主の負担「釈然としない」――企業の広告宣伝部門の責任者72人に聞く<前編>




震災後に繰り返し放映された、
ACジャパンの広告。

3月11日の東日本大震災発生後、多くの企業がテレビやラジオの広告枠を中心にACジャパンの公共広告に差し替えを行った。差し替えた枠の費用負担に関する問題が取り沙汰される中、スポンサーの全額負担とする従来の慣行に対し、広告主からは一様に「釈然としない」という声も聞こえてくる。

『宣伝会議』編集部では5月、一連のAC対応についての「本音」を探るべく、広告主72社の宣伝部門責任者らに匿名でアンケートを実施した。調査は大手メーカー・サービス業などを対象とし、各社の宣伝部や広報部、コーポレートコミュニケーション部の責任者(宣伝部長、広報部長など)から回答を得ている。本記事では、その回答の中から担当者の「本音」の一部を匿名で以下に紹介する。

※72社の今後の広告戦略の方針、震災後の対応についての実名回答は、6月15日発売「宣伝会議」の特集「3.11以降の企業の宣伝活動」にて掲載。

出稿金額の一部を被災者支援に充てても良いのでは

「有事の広告差し替えは、広告業界すべてが責任を分担して対応するのがあるべき姿と考える。クライアントが全費用を負担するのはおかしい。また今回のような事態の際に宣伝担当部署の対応をマニュアル化しておく必要性を感じた」

「有事の広告差し替えについて、テレビ局の立場、広告会社の立場、クライアントの立場がそれぞれ異なり、隔たりが大きかったと感じた」

「“未曾有”という言葉が示すように、多くの備えが否定されたことを考えれば、広告差し替えと料金の問題などについても、今後備えるべき課題である」

「今回の震災のように、長期に渡ってAC差し替えを行わざるを得ない状況になった時の料金については、柔軟な対応が必要と考える。例えば、出稿主が料金を支払うにしても、出稿金額の一部を被災者支援に充てることを考えても良いのではないか」

広告表現をいつから平時に戻すのか悩ましい

「テレビ広告のAC差し替えを行ったが、それに対する料金や露出の振替については個別での調整事項との判断があった。それでは、声を上げない広告主のみがデメリットを被ってしまう。このような時こそ業界団体が折衝を行い、ガイドラインを明確にすべきだと思う」

「何度も繰り返されるACのCMを見ていると、一視聴者として正直、気持ちが滅入った。普段強力な広告効果のあるテレビだからこそ、AC以外にも視聴者を考えた対応を用意しておくべきではないのか、と疑問を感じ続けた」

「AC差し替えには釈然としない感が残る。広告表現をいつから平時に戻すのか悩ましい」

「ACを繰り返して放映するという対応は広告業界として反省すべき。震災後の広告展開として、刻々と変化する被災者を取り巻く環境や感情、社会的な通念に対して、適切な広告、メッセージを投入する配慮と難しさを実感した。川の向こうから“応援します”と言われても腹立たしい」という声も聞かれた。

※「後編」は6月15日に掲載予定。

調査概要

調査方法:メール/FAX
調査対象:約100社(有効回答数:72社)の企業の宣伝部門責任者(宣伝部、広告部、広報部、コーポレートコミュニケーション部など)
調査期間:2011年5月6日~31日

※調査企業(72 社から一部抜粋)
旭化成/アサヒビール/アフラック/エステー/NEC/NTTドコモ/オリンパス/カルピス/キヤノンマーケティングジャパン/キリンビール/クラレ/グリー/KDDI/コーセー/サッポロビール/サントリービジネスエキスパート/シャープ/全日本空輸/ソニーマーケティング/ソフトバンクモバイル/ディー・エヌ・エー/東芝/トヨタマーケティングジャパン/日産自動車/日清食品ホールディングス/日本たばこ産業/ハウス食品/パナソニック/パルコ/富士重工業/富士ゼロックス/ブリヂストン/ミツカン/三菱電機/明治/森永製菓/ローソン他


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