ここでは、『販促会議』2015年8月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
スマホに対して、位置情報をピンポイントで伝える技術として注目を浴びているBeacon。特にGPSからの電波が届かない屋内での活用に期待されている。これまで実験的に設置する商業施設などが数多くあったが、ここに来て本格的にサービスを提供するところも増えてきた。
東京・新宿にある老舗百貨店「伊勢丹新宿本店」では、4月29日より「ISETANナビ」というアプリを配信している。
伊勢丹では本館・メンズ館に約620個のBeacon発信器を設置。アプリを起動し、目的の売り場を検索すると、現在地から目的地までの行き方を案内してくれるという。実際にアプリをダウンロードし、本館1階の宝飾品売り場からメンズ館のめがね売り場を目指して検索してみた。
アプリの画面では売り場の地図が出てきて、どの道をどの方向に歩けばいいか、道案内してくれた。これが、予想以上に正確で、地図上にきっちりと自分の位置情報を表示してくれる。ついつい歩きスマホになりがちで、周りの人とぶつからないように気をつける必要があるが、スイスイと目的のめがね売り場までたどり着くことができた。かなりの数のBeacon発信機があるためか、スマホが自身の位置を的確に捉え、きっちりとナビゲーションすることができたのだろう。
アプリでは、伊勢丹で期間限定で行われている催し物などの情報も配信されている。伊勢丹に頻繁に通うようなファンは、ぜひ参考にしたい情報であるだろうが、一方で、通い詰めている人は、すでにどこにどんな売り場があるかは熟知していることが多く、ナビゲーションは不要かもしれない。
おそらく、この手のアプリは、英語や中国語などの外国語に対応して、海外からの買い物目当ての渡航者に向けても情報発信、館内ナビゲーションできると良さそうだ。
実際に伊勢丹の店内を歩いてみると、円安基調もあってか、とにかく外国人観光客をよく見かける。おそらく、彼らは日本に旅行で来る際、伊勢丹で買い物をするのが楽しみだったに違いない。そんな彼らに、日本へ旅行に来る前にも、アプリで店内の情報を伝えたり、どう歩けば、効率的に買い物ができるかなどのナビゲーションができれば、かなり喜ばれそうだ。もちろん、渡航者のためには、店内にBeaconだけでなく、無料Wi-Fiを充実させても良いだろう。2020年に向けて、海外からの渡航者のことを考えれば、アプリの多言語化は避けては通れない課題になるかもしれない。
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石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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