テレビ×インタラクティブをテーマに、4年で20以上の参加型番組企画を実現してきたバスキュールでは、日本テレビとスマートテレビ、スマートデバイスを事業のメーンフィールドにする合弁会社「HAROiD」を設立。博報堂からスピンオフして生まれたクリエイティブエージェンシーSIXでは、次世代型スピーカー「リリックスピーカー」を開発し、今年の SXSW エンターテインメント・コンテンツテクノロジー部門で、アジア初の受賞企業に選出された。インタラクティブ、デジタルを起点にしたクリエイティブを追求してきたPARTYでも、IoTコンテンツの開発が進行中という。
従来のクライアントワークにとらわれず、新しい取り組みを進めるデジタルクリエイティブ3社からバスキュール朴正義氏、SIX野添剛士氏、PARTY中村洋基氏の3名が集まり、IoT 時代のクリエイティブについて話し合った。
なぜエージェンシーがIoTを手がけるのか?
中村:「IoT」って単なるブームではないと僕は思っています。理由は2つあります。まず、Bluetoothによって非常に低電力でスマホとデータをやりとりできるようになり、計算を全部スマホ側でできるようになって、コストをかけずにモノが作れるようになったこと。もうひとつは、数行のプログラミングだけでモーターを動かせるような仕組みが整ったこと。この2つのおかげで、誰でもアイデアさえあればプロトタイピングできる環境が整いました。最近では、広告会社までIoTを手掛けていますよね。PARTYでも、ネットにつながる歯ブラシを開発している最中です。歯磨きをすると端末のゲーム画面でモンスターをやっつけられたり、面白い機能で歯磨きが楽しくなる歯ブラシです。今日は、エージェンシーがIoTにどうコミットすると面白いのか、テレビはIoTでどう変わるのか、お2人に話を聞いていきたいと思います。
野添: SIXのキーワードは「体験のアップデート」です。僕たちの開発した歌詞が表示されるスピーカー「リリックスピーカー」は、「音楽体験のアップデート」がテーマになっています。今、定額制のサービスで音楽が身近になったり、ハイレゾ音源で音質もどんどんよくなっている。では、その次の音楽体験のアップデートは?と考えた時に、デジタル音源で色々と便利になっていく一方で、「歌詞」をじっくり感じ取る聴き方が減っていることに気付いた。歌詞カードを握りしめて音楽を聴いたあの聴き方を、デジタル時代ならではの新しいやり方でアップデートできたらもっと深く音楽を体験できるんじゃないかという思いで作りました。
中村:SIXではこれを売っていくぞ!と考えているんですか?
野添:1人でも多くの人に体験してもらうために販売する。それはあくまでファーストステップ。世界中の音楽好きへ体験を広げることがゴールなので、そこから色々なサービスと連携させていくことを考えてます。
中村:リリックスピーカーは、透明なディスプレーもカッコいいですよね。歌詞の出し方も、フォントの選び方や動かし方がすごくエモーショナルだと思います。
野添:歌詞は、曲調に合わせて、リアルタイムに最適なデザインで表示しているんです。曲調など楽曲を分析する世界最高レベルの技術を日本のある研究所が研究中だったことから実現しました。このデータを使って、サビの瞬間にドーンと大きく出すとか、メローな曲調に合わせて手描きのフォントにするなど、いろんなことができるようになったんです。今はスピーカーのディスプレー上に表示していますが、もしかしたらテレビに出してもいいし、プロジェクションしてもいいかもしれない。そういうプラットフォームが、ひとつのメディアになるんじゃないかと思って作っています。
中村:なぜエージェンシーであるSIXからIoTが出てきたんでしょうか。
野添:2013年にカンヌライオンズの審査員をした時に、NIKE+FuelBandを作ったR/GAの社長ボブ・グリーンバーグさんの話を聞いて、めちゃくちゃ衝撃を受けたんです。「走る行為自体を人とつながる体験にする」と彼は言っていて、エージェンシーもクライアントと組んでリアルを変えていくようなことがドンドンできるんだなと。それから自分も「日本でもそういう時代が来る!」と言い続けてきたのですが、なかなか変わらない。得意先への提案の中にも必ず1案そういう案を入れてきたのですが、キャンペーン発想の中では採用には至らない。そのモヤモヤが爆発して、だったら自分たちで作っちゃえ、と開発したのがリリックスピーカーです。