ここでは、『販促会議』2015年10月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
夏の風物詩の一つと言えば、JR東日本の「ポケモンスタンプラリー」だ。
毎年、JR東日本の主要駅構内にポケモンのスタンプが設置され、子どもだけのグループや、親子が熱心にスタンプを集めている姿を目にする。子どもにせがまれて、スタンプ収集に駆け回っているお父さん、お母さんも多いのではないだろうか。おそらく、自分が子どもの頃にあのスタンプラリーがあったら、熱心に毎年、ハマっていたと思う。
そしてこの夏、大人たちも釘付けにしてくれそうな新たなサービスが登場していた。8月1日から20日まで、JR東日本アプリが「山手線ポケモンデジタルラリー」という企画を開催していたのだ。山手線に乗り、アプリを起動すると、アプリ限定のデジタルバッジを入手できる仕組みとなっている。実際に山手線に乗ってみないと、どのバッチを入手できるかわからない。
実際、期間中に試してみた。山手線に乗り、アプリを起動し、山手線ポケモンデジタルラリーの項目をタッチすると、「バッジGET」というボタンがあるので、そこを押す。しばらくすると、デジタルバッチが入手できるという簡単な操作だ。
山手線に乗ってデジタルバッジを入手
音声ビーコンの仕組みを使用
仕組み的には「音声ビーコン」というものを使っており、人間には聞こえない音が山手線の中で流れており、スマホがそれを聞き取って、該当するデジタルバッチを表示するようにしているようだ。通常、こういったサービスではBluetoothを使ったビーコンが一般的だが、山手線では音を使って、情報を認識させている。バッジは全部で20種類あるため、山手線に乗るたびに起動して、集めたくなってくる。足りないバッジは外回りと内回り、どちらに乗ればいいかはアプリにヒントが出てくる。
JR東日本アプリはかつてこの連載で取り上げたことのあるアプリだ。スマホのアプリはサービス開始時に注目され、盛り上がりを見せても、すぐに使われなくなってしまうことがほとんだ。JR東日本アプリの場合は、電車が止まってしまっているときなどに起動することはあっても、普段から頻繁に起動するようなアプリではない。そういった面でも、こうした季節限定の企画を投入することで、アプリの存在を思い出してもらい、再度、使い始めてもらうような取り組みはとても重要だと言えそうだ。新たなアプリを開発しなくても、既存のアプリに限定企画を追加して、継続利用を促す必要性を、JR東日本アプリは教えてくれたような気がする。
「JR東日本」に関連する記事はこちら
石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
【販促NOW<MOBILE APPLICATION>バックナンバー】
- Wi-Fiスポットを無償で提供するアプリ、訪日客の行動分析も
- 店内情報や道順を案内するアプリ、ISETANナビ
- Apple Watchにいち早く対応したJALのアプリ
- 再配達の依頼から送り状の作成までアプリで完結——クロネコヤマト公式アプリ
- コーヒーを淹れる音を認識して情報を配信するネスカフェ アプリ
- 再配達の依頼から送り状の作成までアプリで完結——クロネコヤマト公式アプリ
- アプリで処方箋を送信、薬の受け取り時間を指定
- 手間なく出品できる急成長のフリマアプリ
- ビールの売り子に革命!?球場のiBeacon活用
- カーナビアプリで広がるビジネスモデル—ヤフー「Yahoo!カーナビ」
- 位置をピンポイントに狙った販促—iBeacon
- 美しい画像で感性を刺激するPinterest
- 写真をおしゃれに装飾、Instagramの活用事例
- 中づり広告を見る感覚で雑誌記事をその場で閲覧—凸版印刷、VIBE「中吊りアプリ」
- 1000万近いユーザーへ魅力的なクーポン配信
- キャッチフレーズと写真の違和感でユーザーが創意工夫
- 自販機を通り過ぎると美人店長からメッセージが届く
- おサイフケータイが使えないiPhone乗換ユーザーの救世主
- 4週間で「桃の天然水」20万本分の販売に貢献、LINE「マストバイスタンプ」の販促効果
- 店員と会話せずに買い物できるアプリ
- ショッピングモール内の店舗の集客に役立つO2Oアプリ
- ラジオ×スマホで雨を来店のチャンスに変える
- スマホの持つ「ワクワク感」を伝えるアプリ
- ブランド無関心層も 振り向かせるアプリ
- 人間には聞き取れない「音」を使いクーポン配信
- スマートフォンに標準搭載でアプリの認知拡大