国際広告賞などの場で継続的に高い評価を得ているグローバルエージェンシーや、気鋭の独立系エージェンシーなどを中心とした注目企業への訪問のほか、9月28日〜10月1日に開催中のイベント「Advertising Week」内で行われるセミナーの聴講などを通じて、日本の広告界の未来に向けたヒントを得ることを目的としています。
ここではまず、Advertising Weekの開催地である米ニューヨーク・タイムズスクエア周辺の様子を、写真を通じてご紹介します。
デジタルサイネージは基本の“お作法”?
日々、街を行き交うビジネスマンに加え、年間5640万人もの観光客が訪れる(2014年、過去最大)ニューヨーク。開催中の国連総会の開催の影響もあり、いつも以上に人で賑わっています。
現地を訪れて驚いたのは、デジタルサイネージを活用した広告が所狭しと並び、タイムズスクエアの風景をつくりあげる重要な要素となっていること。ビルボードや建物壁面、ショップ店内と至るところに、さまざまな様式のデジタルサイネージが掲出されており、まるでデジタルサイネージの活用が“基本作法”であるかのよう。建物全体がサイネージディスプレイに覆われた“デジタルサイネージ建築”のようなビルも多数見られます。
屋外広告の出稿枠は、タイムズスクエアが公式に提供しているものだけで20種類にのぼり、単なる“デジタルポスター”にとどまらず、リアルイベントとの連動や、モバイルを活用したインタラクション企画、ほかのメディアと組み合わせたインテグレーションキャンペーンなど、テクノロジーを最大限活用した広告・コミュニケーションを展開できるものが、ほとんどのようです。
この地で多くの企業が屋外広告を掲出する最大の理由について、今回の視察研修ツアーに帯同し、訪問先企業やAdvertising Weekでの解説を行う榮枝洋文氏(デジタルインテリジェンス取締役/ニューヨークオフィス代表)によると「世界のビジネスの中心地であるニューヨークは、当然、世界中のメディアからの注目が集まり、その現在の模様が大小さまざまなメディアを通じて発信されていく。タイムズスクエアの屋外広告は、そこを通りかかった人々に向けて訴求するというよりは、そうしたメディアへの露出による大きな広告効果を期待してのものが多い。そのため、“テレビ映え”のするクリエイティブを各社が工夫している」と言います。
また、東京・渋谷のスクランブル交差点も、デジタルサイネージを活用した広告が多数掲出されており存在感を示していますが、ニューヨークのそれとの大きな違いは、「音声が出ていないこと」です。サイネージ広告において音声を用いることが法律で禁じられており、榮枝氏によると、こうした法制度は、サイネージ広告が現在のような盛り上がりを見せる以前に、すでに整備されていたといいます。
テレビCMのようにチャンネルを変えたり、Web広告のようにブロックしたり、動画広告のようにスキップできない屋外広告。街行く人に不快感を与えたり、行動を阻害したりしないよう、聴覚の面から公共性を担保することを目的とした対応と言えます。
また、デジタルサイネージと一口に言っても、
(1)販売促進を目的としたデジタル版ポスター
(2)通行人や来店客に対し、商品・サービスに関する詳細な情報を提供するメディア
(3)店頭で提供してきた既存サービスを拡張する装置
など、その役割に応じてさまざまな種類のものが存在します。もちろん、百貨店「Macy’s」で見られた、商品タグに記載されたバーコードをかざすと店内の色違い・サイズ違いの在庫状況を調べることができるものや、ドラッグストア「CVSファーマシー」にある、バーコードを読み取って商品の価格を調べたりクーポンを発行できるものなど、(2)や(3)に該当するものも、もちろんありますが、全体の印象としてはまだまだ(1)が多い様子です。
Advertising Weekで行われている数々のセッションのレポートの一部も、こちらで追って公開します。お楽しみに!