買収から2年、電通イージス・ネットワーク これからの戦略—ジェリー・ブルマンCEOインタビュー

2013年3月の電通イージス・ネットワーク(以下DAN)発足時よりCEOを務めるジェリー・ブルマン氏。2年が経ったいま、現状の分析とこれからの展望をどのように考えているのか。

(*本記事は10月31日発売、月刊『宣伝会議』12月号に掲載のインタビュー記事を一部、抜粋して先出し、公開したものです)

世界の広告史上で最大の買収案件はなぜ成功したか

——DAN CEO就任から2年が経ちました。この2年を振り返り、どう見ていますか。

広告業界の歴史において、電通によるイージス・グループの買収は最大級の案件であり、素晴らしい成功物語です。その統合プロセスが例外的にうまくいっただけでなく、ビジネスとしてのパフォーマンスを見ても、非常に力強いものになっています。

この2年間で、ビジネスは競合他社の3倍近い速度で成長し、並行して50もの買収も実現しました。我々のケイパビリティはさらに強まり、成長戦略は加速化しています。

そして我々はネットワークのビジョンを確立しました。「革新的な手法でブランドをつくる」がその内容ですが、社員全員がこのビジョンを理解し、日々のビジネスにおいて関与することで、大きなパフォーマンスが発揮されています。

買収・統合案件の課題として一般的に指摘されるような文化の違い——つまり、イージスと日本の電通のビジネスの間のレガシーや文化の違い——は確かにあります。しかしそれ以上に、両社が似たような価値観を共有していたことが、統合プロセスが例外的にうまくいった理由のひとつでしょう。

——似たような価値観とは、具体的にはどういうことですか。

それは多くありますが、例えばクライアントファーストの精神、責任をまっとうする、機敏に動く、先駆的である、そして協業を好んで行う——といったことですね。それらをよしとする価値観が電通とイージスは非常に似ていたんです。

さらに付け加えるなら、「ambitious(=熱意)」の精神です。買収前の話し合いの時点でこうした価値観が通じ合うことに気づいたからこそ、一緒にやっていけると思ったのです。

——電通に対するイメージは、電通グループの一員になる前と後でどう変わりましたか。

電通というのは、私のみならず多くの人にとって「謎」なんです。素晴らしいという評判がある一方で、実際に理解するのは難しいというような。ですから、私が電通と関わる前に持っていたイメージも、一言で言えば「日本でビッグ」というくらいでした。

もちろん、今はよく理解できています。電通には強いプロフェッショナリズムがあること、そしてどんなスキルを有しているのか。114年という長い期間にわたって成功している秘訣も分かるようになりました。一貫性を持ってビジネスを発展させ、必要な投資を見極めて行い、人材の質を担保し、いい若い才能を入手しようとする姿勢を失わずにやってきた。それから、社員の忠誠心。これらを通じて電通というブランド、今の日本での立場を築き上げてきたということでしょう。

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