BBC日本語版サイト開設、ネット時代のジャーナリズムへの挑戦

BBCワールド ジャパンは、BBC日本語版ニュースサイトをオープンし、それに伴うメディア向けローンチイベントを10月15日、東京ヒルトンで行った。

新サイト「BBC.jp」は、国際問題やビジネス、エンターテインメント、テクノロジー、世界における旬の話題を配信。およそ100カ国に配された BBCのジャーナリストたちによるニュース記事の中から、日本のユーザーにとって有意義なトピックをキュレーションして届けていくという。

ローンチイベントには、BBCグローバルニュースリミテッドCEOのジム・イーガン氏、BBCワールドジャパン マネージング・ダイレクターの渡辺雄二氏、同デジタル・エディターの加藤祐子氏が出席し、日本語サイト開設の狙いやニュースメディアが果たすべき役割などを語った。

冒頭で全体戦略を語る
BBCグローバルニュースリミテッドCEOのジム・イーガン氏

冒頭では、渡辺氏とイーガン氏が登壇し、渡辺氏はBBCニュースについて「BBCが配信するニュースの大きな特徴は、それが生きたニュースであること。何らかの事件が起きてから現場に行くのではなく、現地にいるジャーナリストたちが事件の背景にある文脈を理解した上でニュースを伝えることができる」と説明。

イーガン氏は、「ニュースを取り巻く環境がこれだけ変化しているなかで、メディアも絶えず変化に対応し、革新をしなければならない。現代はSNSなどを通じ、誰でもニュースを発信することができる。そんな時代になぜジャーナリストが必要なのかといえば信頼性にある。SNSなどで発信された情報でも、それをより多くの視聴者やユーザーに届けるのは主要な報道機関。BBCのようなメディアは事実関係をしっかりと検証し、背後の真相を伝える責任を担っており、実際に『SNSで見たニュースも、BBCで見るまで信じない』という人もいる。本当に中立・公正なニュースを得られる機会を提供することが、これまで以上に求められている」と語った。

パネルディスカッションに登壇した(左から)BBCワールドジャパン デジタル・エディターの加藤祐子氏、イーガン氏、ジャーナリストの津田大介氏、スマートニュースの藤村厚夫氏、LINEの田端信太郎氏

その後に行われたパネルディスカッションでは、モデレーターを加藤氏が務め、イーガン氏に加えてゲストとして、ジャーナリストの津田大介氏、スマートニュースの藤村厚夫氏、LINEの田端信太郎氏が登壇。「ニュースメディアの未来」をテーマとした議論が交わされた。

田端氏が「記事とそれを束ねるメディアがバラバラになった。善し悪しは抜きにして、あらゆるニュースが断片化してユーザーは自由に情報を摂取できるようになった」と語れば、「ニュースソースが多様化して選択肢が多いなか、質の高いニュースを提供しないと視聴者はどこかに行ってしまう。ユーザーの要求レベルが高くなっており、ニュースに参画する姿勢も強まっている」(イーガン氏)、「ニュースの定義が変化しており、それはシュリンクではなく拡大を意味する。実際にスマートニュースがニュースととらえる領域は広がっており、情報をニュースとしてとらえる発想の広がりも必要」(藤村氏)、「国民が議論するための議題を設定するのがジャーナリズム。従来のメディアがニュースの重みづけをする編集という行為は変わらないものの、その編成が変わった。その象徴として、SNSで話題になったり炎上したことをマスメディアが報じるということが起こるようになっている。つまり、一般のユーザーの側からボトムアップでアジェンダが設定されてくという、逆流のようなものがトレンドとしてある」(津田氏)などと語られた。

「単に視聴者やユーザーが求めているニュースだけを配信するのでなく、ニュースの編成の作業がメディアに求められるいま、ジャーナリズムの役割を考え直さないといけない」とイーガン氏が指摘すると、今後メディアが果たすべき役割として津田氏は「ニュースの読み解き」「ニュースの発掘」「情報源になること」を挙げ、記者が取材するための情報ソースとしてソーシャルメディアが機能しているなどと紹介。田端氏も「この人が勧めるニュースであれば見てみようと思うのは、そこに信頼があるから。その信頼がどこに紐づくのかという意味で、“個人か組織か”ということが問われる時代になった」と語り、藤村氏も「なぜこのニュースを報じるのかという見識をメディアが伝えないといけない。同時に、価値のあるコンテンツが何かという普遍的な価値判断軸をメディアが提示するべき」と話すなど、これからのニュースメディア、そしてジャーナリズムを考える上で示唆に富むトークが繰り広げられた。

また、ローンチイベント終了後の渡辺氏による一問一答は以下の通り。

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