新幹線開業に伴い、北陸三県に視線が注がれている。どうすれば多くの観光客が足を運びたくなるか、そしてリピーターとして定着させられるか。勢いのある内に具体的な施策が求められる。
「マーケティング・クリエイティブで企業・地域を活性化する」と掲げたセミナー(主催=宣伝会議)が27日、金沢商工会議所(金沢市)で開かれた。一般企業のほかにも広告会社やメディア企業から約100人が参加した。
登壇者は、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」がヒットしたJR九州の森勝之・広報室長と、Jリーグ国際部の山下修作氏。また、地方産品のビジュアルデザインを数多く手がけるカナリア(東京・港)の徳田祐司氏がクリエイティブの視点を加え、三氏でパネルディスカッションを行った。
森・広報室長が指摘するのは、県を超えた総力体制の必要性だ。「九州も以前は個々で観光施策を展開し、うまくいかなかった。オール九州で取り組む打開策となったのが九州新幹線鹿児島ルートの全線開業だった。『ななつ星』も、『九州7県で輝きたい』との意図を込めたネーミング。それが全域にネットワークを持つJR九州の役割だからだ」。
「思わぬ魅力を見つけ出して」
一方、北陸から海外へ打って出るにはどうすべきか。Jリーグの山下氏からは、クラブを持つ地域の企業と海外へ進出する事例が紹介された。「海外ビジネスには人脈が不可欠だ。サッカーはいま、特にアジアで人気を集めている。富裕層がクラブに投資するケースも珍しくない。そこで彼らにJリーグで培った運営ノウハウを提供し、代わりに人的ネットワークを紹介してもらう取り組みを進めている」。
徳田氏からは「大事なことは、世界で唯一のオリジナリティを見つけること」という論点が示された。「日本の工芸品も、海外に輸出するだけでは見向きもされない。しかし、背景にあるストーリーや文化的な深み、精神性が伝わると、とたんに興味を持たれる。それこそが、人々のリスペクトを集める独自性だと思う」。
Jリーグの山下氏からは「実は日本人のほうが日本の価値に気づいていない」という指摘も飛び出した。「東南アジアの人々は『寒さ』を求めて北海道を訪れるという。夏より冬のほうが良いのだそうだ。こういうことは北陸エリアでもあり得る。一度、自分たちの先入観を壊し、何が魅力なのかを再発掘すべきではないか」。
「交通インフラの力は、隠された魅力を表に出すことでも発揮される」と話すのは、JR九州の森・広報室長だ。「北陸新幹線はその端緒。世界に自信を持って示せる価値が、たくさん見つかるはずだ。北陸もぜひ、3県で手を取ってブランド化を果たしてほしい」とエールを送った。