<登壇者(右から)>
玉川岳郎(たまがわ・たけお)
日本アイ・ビー・エム マーケティング&コミュニケーション 広報 部長
見本市主催企業の広報宣伝担当を経て、外資系IT企業に入社。広報のリーダーとしてチームを率いる。2013年より現職。ITmedia オルタナティブ・ブログでも発信中。
松岡洋平(まつおか・ようへい)
スマートニュース マーケティングディレクター
アーサー・D・リトル(ジャパン)を経て2007年ライフネット生命保険入社。マーケティング部長として広告・広報・Webなどを所管。2011年、米国ワークカジュアルブランド「ディッキーズ」日本法人立ち上げに伴いウィリアムソン・ディッキー・ジャパン・リミテッド副社長就任。2014年9月スマートニュース入社、現職。
加藤恭子(かとう・きょうこ)
ビーコミ 代表取締役
記者・編集者を経てIT企業でマーケティング・広報の責任者を経験。2006年にビーコミ設立。日本広報学会「ソーシャルメディア広報研究部会」部会長。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
広報やコンテンツ制作者に必要な「Integrity(高潔さ)」
今回のイベントでは「キュレーション時代のデジタルPRを考えよう!」と題し、日本アイ・ビー・エム マーケティング&コミュニケーション 広報部長・玉川岳郎氏、ビーコミ 代表取締役の加藤恭子氏、そしてスマートニュースのマーケティングディレクター・松岡洋平氏が登壇。まず「デジタルメディアとPR」の全体像と潮流について、セッションが繰り広げられた。
まず参加者からは、ここ数年の間に勢いが増しているSNSやニュースアプリ、キュレーションアプリは今後も伸びていくのか、それとも数年のトレンドで終わってしまうのかといった質問が寄せられた。
これについて、日本IBMの玉川氏は「口コミ系メディアはなくなることはない」と意見すると同時に、「しかし、他のメディアの情報をコピー&ペーストしただけのメディアはやがて淘汰され、ビジネスとして成功を収めるには至らないだろう」と明言した。
玉川氏がコンテンツを作る上で最も大切なことのひとつに、「Integrity(高潔さ)」があると指摘する。「他者の著作物に敬意を払うことは、コンテンツ制作者の基本。それができなければプラットフォーマーとの信頼関係を構築することは不可能」といった見方を示した。
もちろん、広報担当者にとってもIntegrityは重要であり、特にステルスマーケティングなどが問題視される中で求められる資質といえる。
広報担当者の疑問「SmartNewsに載る方法とは?」
また、ここ数年でネットニュース業界に大きなインパクトを与えたのが、ニュースアプリの存在。日本において、ニュースを読むデバイスとしてモバイルがデスクトップの比率を上回るなか、かなりのユーザーがニュースアプリやFacebook経由でニュースに触れている状況にある。
それほど大きな影響力を持ち始めているニュースアプリに、自社の情報をピックアップしてもらうにはどうすればいいのか——。多くの広報担当者が気になるところだが、スマートニュースの松岡氏によれば、「(タイアップ広告やオウンドメディアをLPとし誘導をかけるような)広告を出稿するという手段以外で必ず載る方法は存在しない。しかし、提供されるニュースの“質”を高めることで、オーガニックでピックアップされる確率は高くなる」。
松岡氏の言う“質”とは従来の広報活動と同様に、世の中の話題になるようなネタを出せているかどうか。つまり、ユーザー視点で琴線に引っかかるトピックを提供できているかということ。
さらに、SmartNewsのユーザーにとって目に留まり、読み応えのある記事かどうかということ。
「SmartNewsでは表示されている各ニュース記事がどれくらいのユーザーにクリックされ、どれくらいしっかりと読まれているかといった情報ををリアルタイムで反映し、ランキングにしています。オーガニックに載っても数分で消えてしまう記事もあれば、数時間以上掲載され続ける記事もある。ピックアップされ、かつ長時間掲載されるには従前の広報活動と同じく『新奇性』『独自性』『内容の深さ』などが重要」といい、世の中の話題になるようなネタ選び、分かりやすいタイトル、目を引く写真、オリジナリティのある内容、適度な文章量といった“質”を高めていくことが欠かせないと説明した。
PRパーソンはプラットフォームの変化に敏感であれ
ではSNS、キュレーションメディア、そしてニュースアプリなど様々なメディアが登場し、浸透していく中で、理想的な広報の在り方とは–。これには三者とも、「常にメディアの最新情報を知り、キャッチアップすることが重要」と言う。
「例えばFacebookでも、アルゴリズムが変わった時には公式にアナウンスをしています。そうしたプラットフォーマーの変化に敏感になり、どういう情報が望まれているのかを追う必要があります」と松岡氏。おりしも、イベント当日はAppleのニュースアプリ(米国のみ)を搭載したiOS 9がリリースされたばかり。そのような変化にキャッチアップすることはデジタルPRの基本となる。
ビーコミの加藤氏も「何よりも自分自身がメディアを使ってみることが重要」と主張する。
「広報担当者の中にも“炎上が怖い”“使い方が分からない”といってSNSのアカウントを持っていない人が少なくありません。けれども、自分がやらなければ、どういった表現が他のユーザーに好印象を持たれるのか、どういった文脈で炎上する危険があるのか理解できないのでは」。
また、いまネット上で注目を集めているキーパーソンや発言力のある専門家、Instagramの使い方が上手い広報担当者などを挙げながら、「SNSにおいてはツールを使いこなしている人やそのアカウントを積極的にフォローして、どういう情報を発信しているのか常にウォッチしておくこと」「自らネットワークを広げ、情報発信が上手い人とつながっていくことが重要」とアドバイスし、締めくくった。
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