企業をめぐる危機、一瞬のうちに広がる
1999年、ナップスターが人々の間で利用されると、日本においてもウィニー利用者が急増し、「ファイル共有ソフト」という言葉が広く認知されるようになる。文書ファイルはもちろん、画像、音楽といったファイルが自由に相互に交換できるようになり、情報伝達のスピードは限りなく早くなった。後に著作権問題や個人情報・機密情報の流出問題などで利用者のモラルが問われ、企業は訴訟に巻き込まれ、あるいは開発者が逮捕されるといった事態に追い込まれた。一方、同じ時期に「iモード」を開始したNTTドコモは、携帯電話を使用して電子メールの送受信、インターネット上でのWebページの閲覧のほか、ネットバンキング、着メロ、音楽の有料配信サービスなどを展開、若者やビジネスシーンで市場を拡大、さらに情報伝達のスピードは加速化し、携帯電話の利用者の増加に伴って、情報はより身近なものとなった。
筆者は数年前にiモードの台頭によって危機の発生は3日から3時間に短縮された、とコメントし、企業の危機管理担当者に警鐘を鳴らすとともに、「情報管理」から「情報開示」に戦略シフトするよう薦めたことがあったが、最近発生したトヨタの大規模リコール問題や海保職員による情報ビデオ流出事件などでは、ユーチューブ(動画共有サービス)やツイッターなどのインターネットサービスが人々に瞬時に情報を提供したり認知させる上で大きな影響を与えるに至り、企業側の開示手段や対応スピードに関して再度検討する時期が到来しているものと考えている。
インターネットが生活の一部となり、ブログやツイッターのようなソーシャルメディアを普通に使いこなす人々が多くなった今、ダイアログ(対話)やディスクロージャー(開示)の方法も変わらなければならない。国際社会の中で“Rapid dominance(急速な鎮静化)”が求められる状況下で、日本企業のCSRはどこまで成長できるだろうか。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 第3回 「元米大統領補佐官から聞いた『目からウロコ』の話!」(11/18)
- 第2回 「“Fire & Forget”理論が語るディスコミの影響」(11/11)
- 第1回 「『広報』は、なぜ必要なのか?」(11/4)