デジタルガレージが出資 新興企業育成プログラムと協業
「人工知能が人間に囲碁で勝った」「『Pepper』だけで接客」——テクノロジーの進歩が日々世間を騒がせている。広告業界でも同様だ。アドテク企業の快進撃が耳目を集めたり、データ活用が叫ばれたり。「新技術によって10年後なくなる仕事は?」という話題を耳にすることも少なくない。
「デザイン・テクノロジー・データの3つを融合させて、新たなビジネスを生み出す企業にしたい」――と、レイ・イナモト氏は話す。同氏は“広告業界のイチロー”にも例えられるほど、世界で活躍する人物だ。デジタル広告代理店のAKQAでは、各国クリエイターを束ねる最高責任者を務めた。
このほど、新会社「Inamoto & Company(イナモト・アンド・カンパニー)」の営業をスタートさせた。会社のコンセプトは「ビジネス・インベンション・スタジオ(新たなビジネスを生み出すスタジオ)」とした。同社にはデジタルガレージが出資し、取締役も派遣する。ただし少数株主で、Inamoto & Coはイナモト氏と共同創業者のレム・レイノルズ氏が経営する。
イナモト・アンド・カンパニーは、広告主企業に、デジタル戦略立案やコミュニケーション表現のコンサルティングをしながら、デジタルガレージの新興企業の育成・支援プログラム「オープンネットワークラボ」と共同で、新規事業やプロダクト開発を進める。
データ・テクノロジー・デザインの3つを、どう掛けあわせるか。イナモト氏は「顧客企業の目的は、結局のところ“何を解決すれば”達成できるのか。私たちの仕事は、問題を見つけるところから始まる。データに答えを求めるのではなく、問題設定にデータを使う」と語る。
例えば、自動車メーカーが「クルマの試乗に多くの人を集める」と目的を掲げたとする。試乗会を喧伝したり、Webサイトの試乗予約できるボタンを目立つように変えたり。ひょっとしたら効果的かもしれないが、費やせるコストに限界がある以上、すべての手段を試すのは非現実的だ。
「だからデータ分析が求められる。例えば、試乗を予約した人はその前に何をしていたか。その行動を起こす人が増えれば、試乗に来る人も増える可能性が高い。何に力を注ぐのが最も決定的なのか、データで問題を発見し、定める。その問題を解決する新たな方法を導くのが、デザインとテクノロジーだ」