将来も残り続ける「広告代理店の価値」はどこにある?

複雑化していく広告代理店ビジネス

画像提供:shutterstock

私はかつて広告代理店の営業担当でした。そのため、いま広告主側にいて「広告代理店とのパートナーシップ」について考えると、複雑な思いを抱きます。

広告代理店と広告主の関係には、さまざまな歴史的経緯があります。現在、世界的なネットワークを誇るメガエージェンシーは、「代理人」というその名の通り、広告主企業のグローバル展開と一緒にオフィスを増やしていくほど、ビジネスネスパートナーとして密接な付き合いをしていました。

ビジネスコンサルティングやマーケティングリサーチといった専門性の高い機能も、かつては広告代理店にとって重要な業務領域でした。それが次第に、クリエイティブやメディア、ダイレクト、プロモーションといったマーケティングコミュニケーション領域に集約され、高度に専門的になるにつれて、二極化していきます。

その一つは、業界の変化に合わせて柔軟に専門的な機能に特化していく小規模から中規模のショップが多く生まれていくこと。もう一つは、そのようなエキスパートであるショップの集合体として、少数の大規模資本が生まれ、コングロマリット化していくことです。広告代理店ビジネスは競争的に複雑になっていきますが、それはマーケティング領域の拡大やテクノロジーの進化、メディア業界の推移、そして広告主のビジネスの変化に伴った必然的な流れと言えるでしょう。

広告主の社長やマーケティング役員が付き合いの深い広告代理店のアカウントエグゼクティブを呼び出して、「こんな商品を出すから助けてほしい」と持ちかけるといったシーンは、すでにドラマの中だけにある牧歌的な世界で、仮にあったとしてもそこからイノベーションが生まれるとは思えません。

こうした状況が生まれた結果、広告主側としての問題は以前に比べてビジネスタスクに応じた最適なパートナーを簡単には見つけられなくなっているということです。現在は既存の広告代理店から、ビジネス全体の変化を理解したアドバイスをもらうことはほぼ不可能です。なぜなら広告代理店のサービスが専門化した結果、全体的な視点を持つことができなくなっているうえ、それは広告主から彼らが評価されるポイントにもなっていないためです。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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