編集協力:大和広告
「100万社のマーケティング」では、大和広告の協力のもと、読者の中でもB to B企業を対象にした「BtoB企業のためのマーケティング塾」を開講した。Nexal 代表取締役・上島千鶴氏を講師に招き、ワークショップを開催。誌面では、講義内容を上島氏自らの寄稿により全3回にわけて掲載していく。
顧客内の意思決定プロセス
各事業責任者が経営会議資料で提示する、来期営業戦略の中で、必ず盛り込む内容は、STP項目である。顧客を業界や企業規模など様々な軸でセグメント(S)化した時に、攻める相手を業種や具体的な会社指名でターゲティング(T)し、自社のポジション(P)として取引占有率などを見ている。
さらに来期受注目標◯(億円)を達成するための具体的な戦術や攻略法、マーケティング施策や活動計画が記載されている。
法人向けの商材やサービスを販売する場合、一般消費材のように担当者や個人レベルでの衝動買いは、ほぼ皆無に等しい。
さらに、契約に至るまでの道のりは案件単価が高いほど長く、社内での会議体や承認を得ながら契約までのプロセスを経る。
よって、各事業部の営業はマーケティング担当者の経験則と同じように、顧客内の意思決定プロセ(Decisionmaking process)を意識している人が多い【図1】。
営業は提案している企業内の組織や意思決定プロセスを充分に研究していないと契約に至らないため、売上目標を達成する「できる営業」ほど、その重要性を理解していることだろう。
最初の相談者は社内でどのような立場・立ち位置か、権限に応じて持っている予算範囲はどこまでか、契約に至るまでの承認フロー(決裁ルート)はどうか、最終的に意志決定する役員(キーマン)は誰か…である。
マーケティングに関わる組織や人材は、営業現場での対面交渉や駆け引きを経験・体験学習したことがない人が多く、Webリニューアルの際など、顧客を理解するために、ペルソナ像(Persona)の整理が主流となっている。
Webコンテンツの読み手を意識するために、個人像としてクローズアップすることも重要だが、その前提として顧客内での意思決定プロセスがどのような組織間を跨って行われるのか、プロセス毎にどの組織・職能や階級(一般社員、主任、課長、部長クラスなど)が主体となって進むのか、取引内容や商材単価と予算権限に応じて変わることを意識しておかないとならない。
例えば製造業の場合、世の中に新製品が出るまでの意思決定プロセスは、同企業内で終わることはない。その製造プロセスの一部分を担っている場合もあるため、デジタルの接点になりうる相手は、企業単位や職種単位まで見ておくことが必要だ。
IT系のソリューション商材の場合、取引窓口部門が情報システム部だとしても、最初の起案者は事業部門だったりする。クラウド系サービスが増える中、最初の接点が今まで接触したことがない事業部門というケースは増えてきていることだろう。
上記のようなことを考えた時に、単にペルソナ像だけを整理すると、機会損失が起きることが容易に想像できる。自社製品や商材が受注に至るまで、どのような意思決定プロセスが存在するのか、実際に現場で折衝している営業部門や事業部門に協力を仰ぎ、整理してみると今まで気付かなかった新しい発見や示唆が得られる。