相次ぐコンサルティング会社による広告会社買収、米国の動向まとめ

デジタルマーケティングが経営の重要なファクターになる時代、米国ではコンサルティング企業による広告会社(エージェンシー)買収の動きが活発化し、多くの企業が広告領域に進出している。AdverTimesでは、その動向を6回にわたってレポートする。第一回は、なぜコンサルティング会社はエージェンシーを買収するのか、その動きと狙いについて織田浩一氏が米国よりレポートする。

*本記事は、「宣伝会議」2016年5月号の特集「コンサルティング会社のエージェンシー買収、日本市場への影響」より一部抜粋したものです

デジタルマーケティング領域で存在感増す、コンサル企業

画像提供:shutterstock

ここ数年、IBM、デロイト、PwC(プライスウォーターハウスクーパーズ)、アクセンチュアなど、従来はビジネス戦略・ITコンサルティング会社と考えられてきた企業群が、エージェンシー機能を社内に構築したり、クリエイティブエージェンシー、デジタルエージェンシーを買収して、広告・マーケティングサービス市場に参入してきている。

背景は調査会社ガートナーによる、2017年には大手企業のCMOが使うIT予算がCIOの予算を超えるという4年前の予測にある。CMOはCRM・DMP・データウェアハウスといったデータ関連のツールから、マーケティングテクノロジー、アドテクノロジーに加え、様々なテクノロジーへの投資を行い始めている。戦略立案に加え、もともとIT分野の業務をしてきたコンサルティング企業が、新たな予算獲得のためにマーケティング分野へ進出するのは当然のことである。

本記事は「宣伝会議2016年5月号」の抜粋です。雑誌では、「コンサルティング会社のエージェンシー買収、日本への影響」をレポートしています。詳細・購入はこちら(Amazon)

ここで、各コンサルティング会社の広告・マーケティング分野への進出状況を見てみよう。IBMは約20年前からIBM Interactive(現IBM Interactive Experience: IBM iX)としてデジタルエージェンシー業務を担う部署を設置し、クリエイティブ、デジタル、解析担当者をグローバルで約1万人抱え、Visa、ネスレ、L.L.ビーンなどをクライアントにしている。2014年のグローバルでのデジタルエージェンシー業務の売上は、15億9千万ドルに上る(AdAge誌調べ)。これまでは、独自にこのサービスを構築してきたが、2016年に入ってアメリカのマーケティング・クリエイティブエージェンシーであるResource/Ammiratiと、ドイツのマーケティング・デジタルエージェンシーAperto、ecx.ioを次々と買収して、クリエイティブ機能を強化している。

業務の例としては、IBMはAppleとの提携を一昨年行ったが、Citi銀行のためにApple Watchアプリの構築をし、Apple Watchのローンチとともに公開したり、日本コカ・コーラのために同社の人工知能Watsonで天気データと自動販売機からの販売データを取り込んで、その日、マーケティングすべき商品を場所により決めて、マーケティング活動をしているという。

PwCでは傘下にDigital Servicesを用意。約3000人のクリエイティブ・デジタル担当者を世界31都市に抱え、2014年には7億4700万ドルの売上を上げている。2013年にはデジタルエージェンシーBGTを買収し、クリエイティブ業務なども充実させている。

デロイトもDeloitte Digitalを4年前に立ち上げ、現在は約6000人を抱え、2014年の売上が14億7千万ドル。2016年2月に、カンヌなどを含めて数々の賞に輝くフルサービスエージェンシーHeatを買収したばかりである。

アクセンチュアも同社のAccenture Digital傘下のエージェンシーグループAccenture Interactiveで14億ドルの売上を誇る。2013年にはイギリスのデザインエージェンシー、Fjordとデジタルエージェンシー、Acquity Groupを買収したのを皮切りに、2015年2月にオーストラリアのデジタルエージェンシーReactive Media Pty Ltdを、6月にスウェーデンのデジタルコンテンツ・コマースエージェンシーBrightstepを、7月にアメリカのクリエイティブテクノロジースタジオChaotic Moonを、8月にブラジルのデジタルエージェンシーAD.Dialetoを、そして12月にアメリカの医療・バイオ業界専門のデジタルマーケティング企業Boomerang Pharmaceutical Communicationを、次々と買収を進めている。

買収が多数進んでいることは、エージェンシーランキングを見てもよくわかる。図は、「AdAge」による2012年から2014年世界、米国でのデジタルエージェンシー業務での売上による、デジタルエージェンシーランキングの変遷である。

2012

 

2013

 

2014

2012年にトップであったWundermanやOgilvy、DigitasLBiといった企業はランキングを下げ、上位にはコンサルティング系エージェンシーやデータ企業のEpsilonが並んでいる。

続きは、雑誌「宣伝会議2016年5月号」。雑誌では、「買収によってコンサルティング会社が抱えている課題」、「迎え撃つ広告会社の対策」などについても言及しています。

織田浩一

デジタルメディアストラテジーズ社代表。広告・メディアビジネスコンサルタント。米シアトルを拠点とし、日本の広告・メディア企業のために欧米テクノロジー提携、調査などの コンサルティングサービスを提供している、

『宣伝会議』編集部
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