アビームコンサルティング本間充氏が分析するコンサル会社による広告会社買収

デジタルマーケティングが経営の重要なファクターになる時代、米国ではコンサルティング企業による広告会社(エージェンシー)買収の動きが活発化し、多くの企業が広告領域に進出している。AdverTimesでは、その動向を6回にわたってレポートする。第4回は、アビームコンサルティング デジタルマーケティング セクター ディレクター 本間 充 氏に、なぜコンサルティング会社がクリエイティブエージェンシーを買収するのかについて聞いた。

アビームコンサルティング デジタルマーケティング セクター ディレクター 本間 充 氏

Q:なぜ、コンサルティング会社がマーケティング領域に進出してきているのか?

これまでコンサルティング会社が、サポートしてこなかったのが研究開発とマーケティング部門。クライアントのビジネスをフルサポートしようという流れの中で、コンサルティングファームのマーケティング領域への進出が始まっている。アビームコンサルティングでも1月27日から、マーケティング業務の変革・改善を継続的に支援する「マーケティングBPRソリューション」の提供を開始した。

クライアント側のマーケティング部門に目を向けても、デジタル時代の戦略を考えると、もはや部門内で完結する話題ではなくなってきている。マーケティング部が時代に合わせた方向転換をしようとすると、他部門に変革のストレスを与えかねない状況も生まれており、上位レイヤーから経営課題としてのマーケティングを考えなければならなくなりつつある。

方向転換の一つが、ロングテール型ビジネスへの対応だ。デジタル時代の変化で最も企業に与える影響が大きいのが、ロングテール型ビジネスの登場と言えるのではないか。これまで大量生産・大量消費のビジネスモデルを小売り流通というパートナーとともにつくりあげてきた日本企業だが、ロングテールのテール部分の顧客のニーズを知ることも可能になっているうえ、企業が独自にECを使い、販売チャネルを持てるようになっている。しかし日本企業の体制は、大量生産・大量消費に対応した生産・在庫管理・物流の仕組みのままだ。「顧客の変化に対応して、ロングテール型のビジネスを始めましょう」とマーケティング部門が考えても、それは社内の他の機能に大きなストレスを与えかねない状況と言える。

そこでデジタル時代に顧客視点に合って、あるべき方向を経営視点から考え、また社内の他部門を巻き込んだファシリテーター役が求められており、そのことが、コンサルティング会社がマーケティング領域に進出する背景にあると言える。

Q:広告会社とは競合するのか?

「コンサルティング会社は、広告会社の敵になるのか?」と言えば、強みを発揮できる部分が異なるので、競合するというより協業するケースの方が多いのではないかと思う。

同じ、「マーケティング」という言葉を使っていても、それぞれが見ているスコープは大きく異なる。私たちは、生産・在庫管理・物流といったところまですべて含めて戦略を立てられるが、広告会社のようなマーケティング・コミュニケーションに特化した知見、さらにクリエイティビティは有していない。同じ土俵で戦うことはないと考えている。

Q:米国内ではコンサルティング会社のクリエイティブエージェンシー買収も話題になっている。

確かに米国では、コンサルティング会社がクリエイティブエージェンシーを買収する動きもあるが、それは日米の企業のデジタルシフトの習熟度の違いがあり、市場環境が異なるからだ。日本で同様のことが起きるとは考えていない。

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日本よりも米国の方が企業のデジタルシフトは進んでいるが、これは日本と米国の企業の事業モデルの違いも多く影響している。日本はメーカーで言えば、研究開発、製造、マーケティング、販売まで全て1企業内に機能として内包されている。一方で米国では機能別に別会社化となっているケースが多く、それだけにデジタルシフトも日本よりもしやすい環境にある。日本のような総合モデルの事業体では、デジタルが与える影響が至る所にでてきてしまい、どこから手を付けてよいかわからない状況だ。そこで、デジタルシフトにも時間がかかるのは必然と言える。

すでに、ある程度の戦略転換が実現できている米国では、マーケティングの方向性も見えているのでパートナー企業に新しい提案を求めている。その中で、コンサルティング会社に新しい提案の期待を寄せている面もあるのではないか。

Q:多様なプレイヤーが登場するマーケティング領域で、自社のポジションをどうつくっていきたいと考えているか。

事業体の特性もあって、日本ではデジタルへの対応もドラスティックに変わることはないはずだ。日本発のコンサルティング会社として、グローバルのフレームワークに当てはめるようなやり方ではなく、それぞれの企業のカルチャーに合った変革の提案ができることが当社の強みだと思っている。

『宣伝会議』編集部
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