講演者
- 北川廣一(サントリー食品インターナショナル 執行役員 マーケティング&イノベーション担当 兼 食品事業本部副本部長)
- 荒尾健太郎(帝人 専務執行役員 新事業推進本部長 兼 マーケティング最高責任者)
コモディティ化した市場環境の中で、技術革新によるイノベーションだけでなく、「お客さまにとっての価値」という、マーケティング視点でのイノベーションが強く求められている。BtoB、BtoCと事業モデルは異なるものの、マーケティング視点のイノベーションでそれぞれの業界を牽引しているリーダー企業2社に、マーケティング視点の、あるいはマーケティング部門発のイノベーションを起こす取り組み・考え方について聞いた。
事業別の組織に横串を刺し価値創出に寄与する
――お二人は、社内でどのような役割を担っているのでしょうか。
北川:サントリーの食品事業本部は、二つの事業部で構成されます。「伊右衛門 特茶」「GREEN DA・KA・RA(グリーン ダ・カ・ラ)」など健康系の商品を開発する「ブランド開発第1事業部」と、「なっちゃん!」「BOSS」といった嗜好系の商品を開発する「ブランド開発第2事業部」。私は、「コミュニケーションデザイン」と「イノベーション」という視点で両部門に横串を刺し、サポートする役割を担っています。「横串」とは、言うは易しで、実行するのは非常に難しい。売上・利益に責任を持っている事業部に対し、「こういうコミュニケーションをしたほうがいい」「こんなイノベーションがあったらいいのでは」などと横から口を出す私は、ともすると嫌われる立場になりかねません。業務を円滑に進めるための最大の秘訣は、厚かましさとキャラクターなのでは、と思います(笑)。
荒尾:レーヨンメーカーとしてスタートした帝人は、化学技術や最先端の研究開発を経て、現在では「モビリティ」「情報・エレクトロニクス」「ライフプロテクション」「環境・エネルギー」「ヘルスケア」をフィールドに、高機能素材・複合材料、電子材料・化成品、ヘルスケア、繊維製品・流通、ITなど多岐にわたる事業を展開しています。私はそこで、マーケティングの最高責任者と、新規事業を推進する役割を兼任しています。というのも、帝人はブランドステートメントに「Human Chemistry, Human Solutions」を掲げ、世界のさまざまな課題やニーズに応えるソリューション、すなわち価値を提供し続けることを目指してきたのですが、近年「帝人は、社会に対して本当にソリューションを提供できているのか?」という疑問が生じてきました。そこで、CMOとしてマーケティング視点で帝人全事業に横ぐしを刺し、また新事業創造においても、そういう視点で考える役割が必要だということになったのです。