まったくの未経験から社内ベンチャーを始めてわかった10の大事なこと(前篇)

文:糸永洋三


本コラムのタイトルである「社内ベンチャー奮闘記」そのものが、今回、そして次々回(テレコで書いてますので!)のテーマです。会社設立後ちょうど3ヶ月、1クールを経過したタイミングで、社内ベンチャー&サラリーマン経営者という立場ながらも会社経営に携わって実感した経験・ナレッジ談を現時点段階ながら、10か条に集約してみたいと思います。

サンプル=1、ながら、「社内ベンチャー」にチャレンジしようとしている方々に対して、勇気やアシストとなるものを差し上げられたら大変幸いです。

①親会社の既存資産を「フル」に活用する

我々にとっての〝親〟は、博報堂DYグループという総合広告会社。そして「総合広告会社の競争優位な資産」とは、マス/インターネットを網羅したメディアに関する知見、スポーツ・エンタメ産業全般におけるコンテンツ領域での経験、クライアントとのネットワークそのものになるわけです。

自分たちだけで事業を始めようとしたとき、入社以来12年にわたるキャリアで培った社内外の人脈が、いま最大限発揮されている!と認識しています。新聞社、出版社などのメディアにとどまらず、インターネットメディア業界全般や、さらに社内のMD部門のスタッフとの連携など、親会社の担当部署とその先にいる各パートナーの方々との折衝を日々進めています。親会社の「看板」に、かなり助けられています。

②社長(事業責任者)に会いに行く

社内ベンチャーへの応募案件を作りこんでいる最中には、数多く社外の方々にお会いしました。50社以上とお話をしたはずです。事業アイディアを相談するばかりではなく、一緒にブレストに付き合っていただいたり、時には叱咤激励をいただきました。

ですが実際に事業アライアンスを組む、という具体的な提案段階になるとグッとハードルがあがっていきます。現場担当者へのご相談からスタートして・・・の方法では圧倒的に成功率が低くなってしまう。

現場レベルで意気投合しても、そのテンションをキープしたままで先方社内を納得・説得していただくのは非常に難しいわけです、ぶっちゃけ。グルグルしながらたどり着いた突破口は、組織上のなるべく上長、最高なのは社長!に直談判することに尽きる、と思います。判断が早く、無駄が少ない。かつ的確にポイントを捕まえた協議となることが多く、ネクストアクション策定まで時間もかからなかった、がほとんど。また、トップにいらっしゃる方々の多くから、新たなキーマンを紹介していただいたな、と改めて思う次第です。

③「リスクをとる=自分たちがやる!」をしっかりプレゼンする

広告会社の人間だと思われているからなのか、クライアント、生活者、メディア・コンテンツを取り持つ立場にある、と認識されている感が非常に強く、協業先から「事業に対して主役として本気で関わる気があるのか、と懸念されたこともありました。

対する答えは、「我々がリスクをとります=お金を張ります、投資をします!」と言い切ることだと考えています。ベタにいってしまえば、「事業投資への経営責任は自分達にあります」と宣言するコトバ以上に、相手に本気感を伝えられるものはない。会社設立以前の段階では「社内ベンチャーコンテストを勝ち抜きますから、ぜひご一緒させてください!」となんとも頼りのないお願いばかりしておりました(苦笑)。こんなあいまいな状況にありながらも、我々を信じてアライアンスを組もうと言っていただいた方々には、改めて深謝の極みです。

*詳しくは本コラム「広告会社が自ら「事業を構築する」というチャレンジ

④既存枠組・概念・常識をひっくりかえす突進力

「新しい事業体を立ち上げるなら、親会社にいてはできないことをとことん、ぶっとぶまでやりつくそう! 突進しよう!」という想いが、パウロと私にはあります。社内外の方々と意見交換を重ねていくと、「そんな事業、広告屋さんには無茶だし無理。難しいでしょう?」だったり、「親会社の基準で考えるとNGなんじゃない?」。いわゆる評論家に出くわすことも非常に多いです。

新しい事業領域の構築、をお題にしたならば、今までの業界常識や概念、枠組みでは解決できるわけがない! がぼくらの考えです。

一方で、実際にさまざまな事業を新規に興し成し遂げたり、経営したりしている先輩方が多くいらっしゃるのも事実。そんな先輩方の声にしっかり耳を傾けたいと思っています。

と同時に、新しい=大変、を日々痛感しています。広告業界の先人たちがつくりあげてきたビジネスモデルの偉大さにも脱帽。会社設立から数ヶ月間は「売上ゼロ」と記載せざるを得ない現実に、新しい収益口をつくることの困難さを改めて深く深く痛感する次第です。

⑤凸凹なスタートアップ仲間とスクラムを組むこと

起業するにあたって、なんといっても大事な存在は「パートナー=仲間」です。私とパウロ、営業職からメディア担当へ、と似たようなキャリア。特にインターネットメディア担当時代には、所属する部署を〝越境〟しながら「Media JUMPな企画」をつくりあげてきたぞ、という自負や志があります。と、同じ志ながらも、性格は当然ながら、仕事の進め方や企画書の書き方、プロジェクトの動かし方まで「凸凹」。ぜんぜん一緒ではありません。

共感できるところは大事にしつつ、それぞれの思惑、得意分野を最大限生かしながら「共同経営」を推進することが、我が社の経営にとっては非常に重要なんだろうな、と最近気づき始めています。なぜか? お互いが丸っきり似た者同士だと、リスクヘッジできなくなる。志、ビジョンはひとつながらも、「やり方」はそれぞれ流。それで今のところは順調に推移しています(たぶん!)。

(翌々週コラムにて、後編を続けます)

社内ベンチャー奮闘記 ~新しい広告ビジネスを目指して バックナンバー
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小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)
小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)

小林パウロ篤史
1998年総合商社に入社。中南米、アフリカへの自動車輸出業務に携わる。初出張はスーダン。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて広告の最前線を経験。「ミクシィ年賀状」などで受賞歴あり。2011年4月から現職。(写真左)

糸永洋三
2000年博報堂入社。大手自動車会社などを担当。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて、インターネット領域のメディアプロデュース業務を担当。2011年4月から現職。(写真右)

株式会社MediaJUMP: http://www.media-jump.co.jp
Twitter :  小林パウロ @paulokobayahsi  糸永 @yozoyozo

小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)

小林パウロ篤史
1998年総合商社に入社。中南米、アフリカへの自動車輸出業務に携わる。初出張はスーダン。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて広告の最前線を経験。「ミクシィ年賀状」などで受賞歴あり。2011年4月から現職。(写真左)

糸永洋三
2000年博報堂入社。大手自動車会社などを担当。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて、インターネット領域のメディアプロデュース業務を担当。2011年4月から現職。(写真右)

株式会社MediaJUMP: http://www.media-jump.co.jp
Twitter :  小林パウロ @paulokobayahsi  糸永 @yozoyozo

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