「言葉の料理の鉄人」見習いたちへ

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坂本 和加
コピーライター。東京コピーライターズクラブ会員。

主なコピーに「カラダに、ピース。カルピス」「行くぜ、東北。」「やっぱ、コスパ。SEIYU」など。ネーミングに、電子マネー「WAON」・化粧品ブランド「THE BOOK」、ワコール「GOCOCi」などがある。一倉広告制作所を経て、現在コトリ社主宰。www.cotori-sha.com

 

コピーを書くことは、キッチンに立つことに似ていると思います。どこが似ているかというと、すでに世の中にある材料(=ことば)でしかつくれないこと、どんな難題でも超シンプルで「うまい!」ものをつくればよいこと、などです。キッチンのない家はない。ナイフもいろいろあるし(書く手段)、使い方を教える必要すらない、気さえします。

そんなわけで、コピーライティングのよいところは、誰でもやってみようと思えることだと思います(今年からの中高生部門、いいですね)。だけど、「あのひとのつくるものは、なぜかいつも、うまい」ということが起こる(まあ、それはおいおい目指すとして)。うまいものほど、簡単そうに見えるんです。だから勘の良いひとなら、コピーっぽいものであれば、すぐ書けちゃう。

だけど、そこに目指すものはありません。「TKG(卵かけごはん)なら、誰にでもできますよね」などと言うと、「よーし、立派な卵をつくってみせる!」みたいな方がときどきいるんですが、それも違います。先に言います。じゃあどうすればいいか。そうですね、「そんなの自分で考えろ!」です。ユーがつくりたいものを、ミーは知らんからです。コタエは君の中にある、です。

だけど、ここで涙目になっているあなたに、そのヒントを伝えるならば。ひとまずゴールを設定しようということでしょうか。イタリアンをつくろうとしていた人が、カンボジア料理をつくることはまずないでしょう。何がしたかったんだろうという、まずそうな料理は、まず、まずいでしょう。つまり、そんなようなことです。

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他に、「どんな人に」というのもゴール設定としてありますね。たとえば「急いでいる人」と設定したとしても、マラソン中もあるでしょうし、トイレに急いでいる場合もあるでしょう。食べたらなんて言わせたいか、というゴール設定もありますね。「バカいってんじゃないよ…うまっ!」なのか、「しみじみうまい」なのか。という組み合わせは無数にあるわけで、もうそれだけで、相当数のコピーが生まれてしまうのではないでしょうか。

コピーはとても自由です。煮るなり焼くなり、なんでもありです。さらに、宣伝会議賞の場合は、お題まで選べてしまうわけです。どんなに優れたコピーライターでも、クライアントを好きに選べたことは一度もないと、みなさん口をそろえて言うはずです。気分じゃないから、中華はつくらない。そんなことが通用するのは、宣伝会議賞だけなのです。

悩むことも多いと思います。でも、「カツラムキは下手でも気にするな」です。すべてはうまいかどうかです。新しいのがひとつ、できれば。レシピなんて、まあどうだっていい。たいへんだけど、誰かとそっくりおなじものをつくらなくていい、というのはとても楽しいことですよ。

こやま淳子氏・三井明子氏・坂本和加氏ら 3人を講師に、
 ■ありふれた日常の中からドラマを見つけ出す視点
 ■クライアントや生活者の声を聞く力
 ■誰もが共感できる、強いクリエイティブの生み出し方
 について学び、体感し、身につけるカリキュラム。


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「第54回宣伝会議賞」審査員
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