バズ動画を成功させるために重要なタイミングはどこか。
企画時か、撮影か、編集か、それとも公開時のPR活動か。
そのどれもが重要ですが、最も重要なのは“スタート”です。案件の依頼があり、受託が行われたタイミングで、成功の可能性は既に決まっていると言っても、過言ではありません。
バズを巻き起こしたいと依頼してくださる方は、この自慢の自社商品が世界中で話題になってくれたら…、と、大きな期待を持っている方が多く、できる限りその期待に応えられるようなアイデアを考えます。
ただし、“バズ”は魔法でありません。
“低予算で作った動画で、テレビやネットニュースにバンバン露出し、その商品が世界中で話題になり、訴求ポイントが全部しっかり説明されて、ファンがめちゃめちゃ増えて、売り上げがめちゃめちゃ上がる。”そんな希望を叶えるためには、相当な博打が必要です。
逆にいえば、限りなく「シャープな目的」と「適切な予算」がスタートの段階で設定できれば、バズの可能性は飛躍します。その照準を絞るために、このような“BUZZ BRIEF CHART”を使うことがあります。
①まず、そもそも広告表現領域を超えて、商品やサービスそのものに踏み込める余地があるかどうか。
ただの表現ではなく、本当に自分の生活を変えてくれる可能性があるものは、自分ごと化し、シェアしてくれる可能性が一気に高まります。そんな商品やサービスに、ちょっとしたバズフック(キャッチーなネーミング、映像映えする動き、写真に撮りたくなるビジュアル)を入れられれば、PR露出を最大化することができます。その領域に踏み込めるなら、即GOして、可能性を探ります。
弊社で担当させて頂いたオーストラリア政府観光局様の案件では、景色をまるごと自撮りできる「GIGA SELFIE」という”観光サービス”そのものを開発し、結果的に世界180カ国で話題をつくることができました。
②ただし、商品やサービスそのものに踏み込むのはハードルが高い場合がほとんどだと思います。その場合は、表現で勝負することになりますが、その時、エンゲージメントを深めたいのか、ダイレクトに購買を促進したいのか、という分かれ目があります。
③エンゲージメントを深めたいのなら、商品や企業ブランドの1メッセージだけで貫けるか。商品の露出やUSPの訴求を差し置いて、社会に提言したいこと、ブランドが約束したいことの伝達に専念する事がマストです。
そんな考えの元、我々のチームが制作し、日産自動車のキャラバンのムービーがこちら。(現在500万再生を突破)
これは商品のUSP訴求ではなく、「今までもこれからも、ずっと”日本の職人”を応援したい」という、ブランドの1メッセージで構成されている映像です。
④もし、ダイレクトに販売につながるバズを起こしたいのなら、1つの強烈なUSPがあるかがポイントです。
代表的な例は、ショップジャパンが展開したワンダーコアのCM。その商品独自性に焦点を絞り、その動きを非常に軽快に、そしてユニークに描き切ることで、大きなバズと販売促進を生み出した成功事例と言えると思います。
こちらは我々のチームで協力させてもらった、仙台のベンチャー企業TESS社開発による「COGY」のブランドムービーです。
動かなかったはずの足が動きだす、”足こぎ車いす”という商品。もはや世界を変える発明です。こういった商品の場合は、その商品の可能性をシンプルに引き出すことが、バズ、そして問い合わせを最大化させます。
⑤最後に、品質の議論があります。高品質な映像・楽曲で、ハイブランドらしい出で立ちを見せるのか、それとも、映像のクオリティ以上に商品や企画のエッジで勝負するか。それによって、制作予算に数千万円確保すべきか、数百万で実行できるかが決まってきます。
※この予算感はあくまでも参考値であり、製作者の方に準拠します。あくまでも、各社が健康的に業務を進めるための、個人的見解による目安です。
以上のようなチャートに基づき、議論を深め、しっかりと合意を形成できた案件は、そこから生まれるアイデアはシンプルで、ジャンプ力が高く、バズを生み出す可能性が飛躍的に高まるはずです。
次回は、#05 バズの本題(仮)
チャートの通り、いまもっともバズの可能性を秘めているのは、商品やサービスのイノベーションそのものです。その中にも、バズるイノベーションとバズらないイノベーションがあったりするのでまた難しい。
次回はそんな、バズの本題とも言える、“プロダクトバズ”について紐解きたいと思います。